症例から学ぶ悪性疾患の鑑別法-その38

・・・キーワード11「癌の可能性が高い。貴方ならどうする?-22」・・・・
                                    東京衛生学園臨床教育専攻科講師 小川 卓良

  はじめに、前号の宿題の回答から進める。
<前号の宿題>
[問題1]トランス脂肪酸の摂取が癌などの現代病の発症に大きく関係しているのはもう紛れもない事実であるが、油に関していうとそれだけではない重大な問題が出てきているのである。この点も考慮しないとトランス脂肪酸を多く含むジャンクフード等を食べないだけでは現代病を克服することはできない。それはどういうことでしょう。
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 現在の油製品は味噌・醤油などと同様に製造コスト削減のために短期間で油を抽出するという製造工程になっている。このために固形化しない液体の植物油においても高温で抽出する(油の老化や酸化を促進する)ためにトランス脂肪酸が含まれているということを前回申し上げたが、それだけでなく必須脂肪酸といわれるオメガ3、オメガ6の脂肪酸(コレステロールと共に細胞膜を作っている)の含有量も極端に少なくなっているのである。古くから行われているコールドプレス製法(低温でゆっくり絞るか圧搾して作る)ではトランス脂肪酸もできないし、オメガ3・6の脂肪酸も酸化しないで変質しない。
 よって、油を買うのならばその用途(高温の揚げ物にするのか、常温のドレッシングなどに使うのか等)に合わせてコールドプレスで作った無添加の油にするべきで、相当高くても健康には良いので、医療費等を考えても絶対的に安いし第一病気になりにくいので選択の余地はないと考える。
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[問題2]以前、鰹や昆布・椎茸などでじっくり出汁を摂って料理を振る舞った友人が突然また見えたのであまり手間暇かけずに料理を出したところ、「貴女、腕を上げたね」といわれた。どうしてでしょう。
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 この話は我が家の話であるが、新聞・雑誌などにおいてもこのようなことが散見される。今年の夏頃であるが、ある店で非常に美味しい出汁の煮物があった。女将にその作り方を聞くと昆布と鰹節に椎茸・玉葱などを一晩じっくりと煮出すのだそうだ。なるほど、それでは美味しいはずだ、と思ったら「実は、それだけではお客さんに受けないので化学調味料の”ほんだし”も入れている」ということでギャフンとなった。
 以前、私の友人が、某有名高級しゃぶしゃぶ店の店長をしていた。その店でしゃぶしゃぶを注文し、でてきた鍋の蓋を取って鍋底を見るとなにやら薄茶色の粉が沈んでいた。早速友人にこれは何だと聞いたところ、くだんの”ほんだし”であった。コレを入れると「味が良くなるので」ということである。まさか、賞味期限をごまかしていたが、あの「吉兆」ではさすがにしてないとは思うが、こうなると怪しい。
 この”ほんだし”には、1滴も鰹や昆布は入って無く全て添加物・化学調味料でできているのである。要するに、我々日本人はもうこういう添加物に汚染されて、添加物の方が美味しいと感じるようになってしまったということである1)。
 あの新鮮そうな福岡名産の「からし明太子」は一晩添加物等の化学物質に一晩付けておくだけで、柔らかくて色の悪い低級品のたらこが、薄ピンク色で透き通ったつやつや肌の堅く身の締まったたらこに生まれ変わるとのことである。味も良くするために10種類以上の化学調味料が添加されているということである。確かにカナダに行った時に北海道産のたらこの多くはカナダ産であるという話を聞いたし事実カナダからの輸入は多い。しかし、カナダ産という表示のたらこはほとんど見たことがない。多分北海道で加工されて”北海道産”として福岡に運ばれ、運搬で相当古くなったたらこが魔法の添加物・化学調味料で”新鮮な”たらこに生まれ変わるということらしい。
 娘がアルバイトで、全国に展開している鳥料理の店にアルバイトしていた時、ふにゃふにゃの古いレタスが一晩添加物に付けておくだけで見るからに新鮮でシャキッとしたレタスに生まれ変わるのを体験してきている。大儀名分は消毒であるが、実際は消毒効果だけのために行っているのではない。もうその話を聞いてその店に行かなくなったが、実は安いチェーン店は何処でも行っていることらしい。
 牛乳が一滴も入ってないコーヒー用ミルク、豚骨などが全く入ってないカップラーメンなどのインスタントラーメン等々、この手の話を続けるときりがないのでここで止めるが、以前には無かった化学調味料や添加物だらけの食べ物を我々は知らずに沢山食べているのである。特にコンビニやファーストフードの店で売られている食品に多い。しかし、今までは平均寿命はドンドン延びてきたのも事実であるが、ここに来てそれがマイナスに転じていて徐々に下がりはじめている。今の高齢者はそのような添加物・化学調味料だらけの食事を若い時にはほとんど食べていないが我々団塊の世代(昭和22年~25年生まれ)以後の人は大量に若い時から食べているのである。巷間いわれていることであるが、団塊の世代が80歳以上の後期高齢者になる頃には、日本の平均寿命は相当下がるのではないかということである。
<古来の沖縄食は長寿食>
 沖縄26ショックの主たる原因は若い頃にジャンクフードを食べまくった世代が50代~70代になり脳血管障害・癌・心臓病などで他の県よりも多く死亡したことで平均寿命を極端に下げてしまったのが原因と考えられているが、前述のように沖縄県はそれまで平均寿命が全国1位であり、100歳以上のお年寄りが占める割合が最も高いのも沖縄であり、85歳以上の高齢者比率は大都市圏よりも高い。よって、元々沖縄県民が食べて来ていた食事は以前よりいわれているように長寿食である、ということは言えそうである。
  新潟大学大学院の安保教授も癌にならない、或いは癌を治すのに大事なことのトップに食事の改善をあげているし、全日本鍼灸学会で2回「癌と鍼灸」シンポのシンポジストとして参加された素問八王子クリニックの真柄医師も、米国の癌にならない14箇条においても、魚と野菜中心の食事を勧め、家畜獣肉(牛・豚・羊など)の摂取を止めるか最小限にするように指導しているが、真柄医師によると猿は家畜獣肉を決して食べないそうで、BSEもそうであるが、自分の種と同じまたは近い種の肉を食べることは非常に良くないので、もし家畜の肉を食べるのならば、最も遠い種の鶏肉が良いという理屈である。
 ただ、どうしても豚か牛を食べたい場合には、牛は反芻動物なので牛の脂肪にはトランス脂肪酸が含まれるから、豚の方が良いということになる。そこで、どうしても家畜獣の肉を食べる場合には、鳥>豚>牛の順で身体への害が少ないということになる。
 沖縄の肉は牛ではなく豚肉であるし、ゴーヤの苦みが五味のバランスを取って良いのではないかと勝手に想像している。沖縄料理に関しては http://www.teneshi.com/  を参考にしてされると良いと思う。
<癌患者4題の第1題>
 今年に入って近親に癌患者が4人も出た。一人は私の妻で「乳癌」である。乳癌の患者自身での発見は以外と大きくなってからで平均で2.5cm~3.5cmでTNM分類のT(腫瘍の大きさなど)ではT2であり、N(リンパ節への転移)でN1のステージⅡ(腋窩リンパ節への転移を認める)の段階以上が多いので検診を勧めると言うことらしい。妻は確かに閉経が遅く55歳になってから閉経した。閉経が遅いというのは乳癌リスクの一つである。ただ、妻は癌の直径が0.8cmの状態で自ら発見した。1cm未満での自己発見率は10%未満でそれほど多いものではない。これには笑い話のような発見談がついている。妻は娘から今流行りの寄せ上げブラジャーを送ってもらった。今までのブラジャーでは全く気が付かなかったが、このブラジャーを装着する時に前屈みになって乳房を寄せて上げるらしい。その時に手に堅いしこりを触れたのである。早速、私に報告があり、触診すると堅くゴツゴツして癒着があって癌の可能性が非常に高いしこりであった。ただ、姿勢によって触れにくくなるので、確かにその気になって探さないと分からないほどの物であった。早速、義父が糖尿病で近医により紹介されたA病院に行ったが、やはり乳癌の診断を受けた。私は手術をしないで鍼灸治療で治すつもりでいたが、主人公は妻である。妻は鍼灸治療を信じないわけではないが、癌を持ったままでいるのは転移の問題もあり不安で心配とのことで、温存療法の手術だけは受けたい、という希望で幾ら妻とは言っても私の私物ではないので、了解した。ただ、手術まで約1ヶ月あったのでその間できるだけ鍼灸治療をして様子を見るという条件で早速鍼灸治療を開始した。その間にHSP(熱ショック蛋白)療法も併用しようということで、私なりに考案したHSP療法を試みたが、ぐったりと疲れてしまって1度で止めてしまった。
<HSP療法>
 HSP療法とは本年岡山で行われた(社)全日本鍼灸学会題56回学術大会で教育講演で愛知医科大学医学部の伊藤要子助教授が「熱ショックタンパクHSPと温熱療法」と題して紹介されたが、熱に関わらず、あらゆる刺激によって生体の蛋白が障害を受けた時に、その傷害された蛋白を修理する目的で作られる蛋白のこと(ただ熱ストレスが最も出現しやすい)で、いわゆる蛋白質のレスキュー隊というべき蛋白である。HSPには幾つかの種類があるが一般的には温熱ストレスで最も多く誘導される分子量72000のHSP70ファミリーのことをHSPと呼んでいる2)。
 癌も蛋白質の変性であるから、HSPが有効である。HSPは41度~42度くらいに加温してそのまま30分くらい熱さに耐える療法である。ただしくは加温の前に10分程度予備加温期間をおいて万一のショック死に備え、加温後急に冷ますとむしろ冷えてしまうので、ゆっくり減温する期間をやはり10分くらいおくので合計50分程度かかる。
<癌の温熱療法とHSP>
 また、以前より行われている癌の温熱療法との違いは、癌の温熱療法は41度程度の加温でなく42.5度~43度くらいまで加温して癌を死滅させる療法なので体力消耗が違うという説明がされている。癌の温熱療法は確かにHSPも出現してHSP効果も当然あるが、細胞が死滅する温度まで加温して癌細胞を殺すというものなので本質的に期待する機序が違う。もちろん、癌細胞が死滅する温度では当然正常細胞も死滅するが、正常細胞の部分にある血管は本来の血管で熱刺激に対して血流を促進させたり、血管を拡張させたりして熱を運んで高温状態から少しでも冷やすようにする機能があるが、癌の血管は急増血管であり、安普請であるから、そのような機能は持ち合わせていない。そこでぎりぎりの温度を保つと何とか正常細胞は死滅しないで生き残り、癌細胞だけ死滅するという理屈である。
 HSPもより高温の方が出現しやすいので、42度くらいまで加温して行う方法を考案した。HSP療法では遠赤外線を使った器具を販売しているが、高価である(40万円弱)し大きくて一般家庭では邪魔になるから、普通の風呂で充分であると考えた。すなわち、普通の温度40くらいの風呂にまず入って徐々に加温し、42度で10分頑張り、その後水を入れて徐々に減温していく方法である。遠赤外線による放射熱の刺激容量と液体での刺激容量は全く違うので10分という短時間に設定したのである。
 サウナも良いとは思うけど、予備加温と減温期間がないのが欠点であるが、予備加温は最初に風呂に入って、最後に水風呂に入れば良いのかも知れない。
 癌の温熱療法は体力が十分ある時でないと疲労困憊して1~2日は動けないというような欠点があった。HSP療法はそれに比較するとマイルドな刺激なのでそれほど体力は消耗しないというのが「売り」である。とはいってもかなり体力を消耗するので、気軽にできる療法ではなく、以前より弟の死のショックで痩せたうえに、癌と告知されたショックと不安で食欲もなくなっていた妻には、いささか負担が大きかったようである。
 この妻に、鍼灸治療を約1ヶ月の間20回以上治療を施した。全身調整的(経絡治療も含む)な治療と局所への多壮灸がメインである。乳癌は触知できるし、浅い部位にあるので直接しこりの上に灸をすえるのである。今までに紹介した症例では、かなりの確率で癌が消滅したか縮小している。今回も縮小ないし消滅を期待して灸を行ったのである。
 次号までの宿題として、この妻への治療によって1ヶ月後にどうなったか、としたい。
<癌患者第2題>
 本号で、読者諸兄にも知らされることになったと思われるが、医道の日本社の戸部雄一郎会長が亡くなった。戸部会長は3年ほど前に胃癌の手術(D0手術で胃は全摘したが、医師が勧めるリンパの郭清手術は行わなかった)を行ったのであるが、その後の再発予防の治療はほとんど行わなかったために残念極まりないが亡くなってしまった。
 戸部会長は、大変な健啖家であり、学生時代に柔道とアマレスリングをしていたので素晴らしい筋肉を持っていた。よって、食事も豪快で、あまりに食べるので当時高校生で野球をやっていた戸部慎一郎社長が「親父が馬鹿みたいに食うので恥ずかしい」とばかりに一緒に食べに行くのを嫌がった、という話を聞いたことがある。一緒に米国に旅行に行った時も顔を合わせるたびに「何か食いに行こう」であった。そして、その食べ方も豪快で、かつ調味料が大好きであった。トンカツなんぞはソースの海の中に浮かぶトンカツに雨霰のソースをかけて食べるのである。そして化学調味料も大好きで、何でもかんでも沢山かけて食べていた。ソースも当然添加物だらけであるし、塩分は非常に多い。元々胃が丈夫なので私も会長も高をくくっていたのであるが、やはりというか、当然というか胃癌になってしまった。後から考えれば、胃癌にならない方がおかしいくらいの食事の仕方であったのである。
 もちろん、当然のように術後の再発予防に鍼灸治療を勧めたが、エビデンスはあるのかといわれると、困ってしまった。治った症例や本年の岡山大会の癌と鍼灸シンポで真柄先生が、鍼治療(特に刺絡療法)をメインとする自律神経免疫療法で癌の再発予防に非常に有効である旨の報告があったこと(詳細は次々号あたりで)などをお話しするがいわゆるエビデンスレベルは皆低い。
 戸部会長は仕事柄、医療関係の交友が広く様々な助言・進言及び癌に有効といわれる、または自分に良く効いたサプリメントや漢方薬等が沢山送られてきた。戸部会長は非常な勉強家なので当初はそれぞれ色々調べたのであるが、何れもエビデンスといえるような論文や研究成果はなかったのである。納得してから自分に使うという姿勢は大事なことであるが、人間は信じることによって大きな力を発揮することもある。だから場合によっては単純で素直な性格(ダマされやすい一面もあるが)の方が、信じやすいし、信じることによって救われる面も否定できない。何故なら心が前向きになるし、明るくなるからである。PNI(精神神経免疫学)的な効果が発揮できるというわけである。
 私から勧めた療法に、鍼灸治療とHSP療法はもちろんであるが、もう一つニコチン療法をお勧めした。癌にニコチンが有効?!誰でもが癌発症の最大原因である煙草の主成分であるニコチンが癌に有効なんて話は信じない。
 次号までの読者の頭の体操用に宿題として、ニコチン療法とは何か、ということと妻の治療結果がどうであったかをご賢察していただきたい。

1)安部 司 「食品の裏側:みんな大好きな食品添加物」 東洋経済新報社 2005
2)伊藤 要子「HSPが病気を必ず治す」ビジネス社 2005

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