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会頭講演4:科学的認識とは

<科学的認識とは2>

 前回のSL2は、入口と出口はわかっているが本体が分からないということで例えば鍼をするとある一定の効果が出ることが分かっているがどうしてそうなるのか(メカニズム:効果機序)が分からないという現象は「科学的」といえるのだろうか、という命題であります。

 私が講習会で参加者或いは臨床教育専攻科(免許保持者で教員養成課程)或いはPT科の学生諸君に質問するとほとんどの諸君が「科学的でない」で答えます。なぜ「科学的でない」のかと再質問すると「メカニズムが分からなければ科学とは言えない」と答える方が多い。

 そもそも「科学」とは何か?「科学的」とはどういうことなのでありましょうか?「科学」は「Science」の和訳である。Scienceは「真理を探究する」とか「何故とかどうしてなのかを突き止めること」であるが、それを「科学」と訳したのはなぜなのであろうか?これについては後述します。

 実際に「科学」「科学的」についてはわかっているようでよくわかってない人が多いように思えます。

 

<東洋医学は正しいのか?科学的か?>

 翻って、「東洋医学は科学的なのか」という命題もあります。「古典は正しいのか?」或いは「古典は科学的か?」という問題はほとんどの方は否定すると思われるが、実は全く検証されていないので正しいかどうかは全く不明というのが正解だと思われます。古典が科学的かどうかは、古典時代は現代の「科学」と全く違うパラダイムであったので現代でいう「科学」で説明できない、俎上に乗らないものと思われますが、現代では現代の科学のパラダイムで判断するので俎上に乗らないからそれはそれで宜しいのだ、とは言えません。

<経穴の世界標準化について>

 数年前、経穴の世界標準化が行われましたが、これに関しても誤解している鍼灸師が実に多いようです。あくまでも現代の科学の検証を得て世界標準化が行われたのではなく、日中韓の鍼灸学会で依拠している古典がそれぞれ違うので三国での中庸を取ったのに過ぎないので最も有効な部位に決めたというわけではありません。ただ、ツボの位置が国によってマチマチなのは問題なので統一したという意義はあるかと思いますが、それ以上ではないということです。

<個別化治療>

 また、東洋医学の特徴の一つに個別化治療があります。西洋医学は基本的に個人差を無視した標準治療を行う医学でありますが、東洋医学は個人個人に最も適した治療法を行っているので東洋医学の方が優れていると考えている鍼灸師は多いと思われます。しかし、後述しますが、東洋医学は個別化治療の優位性をもう語れないのが現実であります。

<経穴の有効性>

 また、教科書或いは諸家の教本にある主治穴や治療穴は有効なのかどうか、それらの有効性のエビデンスはあるのかどうか?でありますが、実は有効性を証明された治療穴やそのエビデンスは非常に少ないのが現実であります。教科書の記載は古典をはじめとする諸家の本を調査して最も使われている経穴を記載しているというだけに過ぎず、決して有効性を検証した経穴が記載されているわけではないのであります。

 また、諸家の教本にある経穴はあくまでもその著者が使っている経穴を記載しているのに過ぎず、その経穴の有効性を検証したものではないといいうことです。読者の方が著名な著者が書いているのだから効くに違いないと勘違いしているのに過ぎないのであります。

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