神経痛私考10(筋肉の過緊張を取ると痛みが治る)

神経痛私考10(筋肉の過緊張を取ると痛みが治る)

<筋肉の過緊張が神経を圧迫している>
 俗に言う「坐骨神経痛」はMRIやCTの画像診断で特別な異常が認められない場合で腰部から臀部、大腿の後ろ側、ふくらはぎにかけて痛みがあるときに付けられる便宜上の「病名」ですが、画像診断で異常がないのに何故腰~下肢にかけて痛みがでるのでしょう。一般にEN(神経絞扼:Entrapment Neuropathy)と呼ばれる現象があります。神経は通常脳や脊髄から出ると筋肉を貫いて外側に出てより末梢にいきます。すなわち背骨の際でそこにある筋肉の中を通るのです。そして背骨の際にある筋肉の緊張が強すぎると筋肉が突っ張って、筋肉の中を通っている神経を圧迫します。神経は圧迫されると神経の伝達に影響が出て痛みやしびれ・麻痺の原因になります。

<神経を圧迫している部位は結構深いところにある>
 背骨の際にある筋群は一般に脊柱起立筋といわれる筋群で、神経絞扼している部位は皮膚から3~5cmくらい深いところにあります。ところが病態によっては、もっと深いところ、脊柱(背骨)より深いところで内臓の近くにある腸腰筋(大腰筋)という筋肉が過緊張を起こしている場合には6~9cm、太った方だと10cm以上刺入しないと届かない場合もあります。
 臀部でも神経絞扼があります。代表的なのは梨状筋症候群と呼ばれる病態で、臀部の奥深くにある梨状筋の中を坐骨神経が貫いていて、この梨状筋の過緊張で「坐骨神経痛」が起きることもしばしばあります。長時間の座業をする人に多く診られ、Kボンネテストといわれるテストで陽性になることが多いので比較的診断されやすい病態です。
 この梨状筋が原因で起きている坐骨神経に沿った痛みは腸腰筋よりももっと深いところにあるのでより長い鍼が必要になってきます。通常市販されている鍼は9cmの長さまでなので場合によってはその筋肉まで届きません。当院では12cmから18cmまでもある鍼を業者に作らせたので対応ができます。神経痛私考3で紹介したスイス人は130kg以上もある大きな人で臀部にはこの18cmもある鍼を用いましたが、通常は大体9cmまでの鍼で十分対応できます。

<鍼をすると筋肉の緊張が和らぐ>
 鍼の効用に「筋緊張緩和」というのがあります。しかし、筋肉の緊張がとれたかどうかを客観的に機械を使って証明することは非常に難しいのです。第一被験者の体を傷つけることはできませんので切開して筋肉を調べることなどはもってのほかです。筋電図ならばそのようなことはないと思われますが、筋電図は針を刺して電流を流すので、これ自体一種の鍼ですから、鍼をしてないときの筋電図を見ること自体できません。
 よって、客観的な実験は動物を使ったものに限られますが、動物を使った実験では鍼をすることによって筋肉の緊張が取れることが分かりました。

<ズーンとした感覚があれば治る>
 しかし、臨床的には鍼を刺入していくと鍼に抵抗がありスムースに入っていかない部位にぶつかります。鍼灸師の世界では「鍼が渋る」という表現を使いますが、患者さんは「ズーン」とした重さを感じます。これを「鍼の響き」といい、専門的には特気を得るといいます。鍼が渋ったり、特気を得ると痛みがなくなることがほとんどです。 つづく

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