<鍼灸治療で鬱病が治るか?―7>

<鍼灸治療で鬱病が治るか?―7>

 

<半年ぶりにかかった秘書からの電話>

 前回ご紹介した、鍼灸治療でどんどん良くなり、抗鬱剤などの薬を自己判断で減量し、週一回の鍼治療受診もしていただけなかった会社社長の秘書から半年ぶりに電話があり、「社長が亡くなったので先生も葬儀に列席していただきたい」ということでした。私は先代の会長(社長の父親でご高齢)も存じ上げているので、「社長でなく会長の間違いでは」とお聞きしたら確かに社長とのことでした。まだ50歳で半年前には「鬱」以外の病状は全くなかったので「しまった」という想いがこみ上げてきました。もっと薬を続けるなり鍼灸治療を続けるなりもっと強く言って説得していたらという後悔しきりでした。

 

<鬱病患者の自殺のタイミング>

 鬱病患者が問題なのは自殺することです。しかし、家も出られないほど落ち込んでいるときはその心配もありませんし、鬱病が回復して元気に仕事しているときも全く問題ありません。しかし、全く落ち込んでいた患者が家を出るくらいの元気が出ると、それは同時に自殺する元気も出るということで、この時期が危ないのです。ただ、鍼灸治療に来られるときはその段階を超えている場合が多いので治療しているときはほぼ大丈夫です。

 本当に危ないのは元気な状態から落ち込み始めた時です。「人生がつまらなくなったり」「何事にも興味が無くなった」のがサインですが、ちょっとでも「死」を意識した言動があったら非常に危ないのです。

 実はこの患者さんは大学の先輩で以前からの知り合いで、同期の方もたくさん治療にいらしてくれていました。その人たちに呼ばれての飲み会でこの患者さんが「人生面白くなくてもう死んじゃおうかなあ」と言われたので、鍼灸治療に誘ってきたのが発端ですが、残念ながら元気になったらいらっしゃらなくなってしまったので鍼灸治療は「鬱」に有効だけどきちんと治療後も管理ができないのが問題です。

 

<ちょっとでも死を意識した言動があったら本当に危ない>

 結婚を控えている30歳前後の若い鬱の男性患者さんですが、神経内科で鬱病の治療を受けながら週一回の鍼灸治療を行って一見元気になったように思われたのですが、問診で「最近死にたいなと思うことがちょっとだけありました」と言われたので、神経内科では少し畑違いなので知り合いの精神科の医師にご紹介して診てもらったところ、「自殺念慮」があるのでこちらで入院させて治療しますというご回答を得ました。数週間入院して元気になって退院して当院に来院されましたが、以前よりかなり改善していました。鍼灸治療を2~3ヶ月行ってすっかり元気になって来院されなくなりましたが、その後ご結婚され、子供も出来て元気にしているということをご家族からお聞きしました。

 

<餅は餅屋>

精神科の医師からは以前の薬ではだめで、違う薬で治療しますという報告を受けていましたので、やはり専門医は違う(餅は餅屋)という印象を強く持ちました。以前内科医との勉強会で、内科でも「鬱病」の患者は診ることができるけれども軽度の鬱しか実際に見ることができないし、たくさんある薬の使い分けは専門家しかわからないということを伺っていたので、鬱病だから「抗鬱剤」を使えばすべてよくなるということでは絶対ないという印象を持ちました。つづく

コメントを残す