「東洋医学と西洋医学ーどちらが本質治療に近いのか」会頭講演要旨

<自然治癒力>

 鍼灸医学は、「身体がもともと持っている自然治癒力を惹起あるいは鼓舞して治す」、ということで、鍼灸でもって直接治すのではないところに特徴があります。すなわち鍼でウイルスや細菌をつついたり、灸で焼いたりするわけではないということです。西洋医学は解熱剤で熱を下げたり、手術で病巣と取るというように自然治癒力を頼らずに治す方法と考えられがちです。しかし、果たして本当に自然治癒力に頼らないのでしょうか?

 1997年の(社)全日本鍼灸学会(現在公益社団)東京大会の「身体を見つめる伝統と科学」と題したシンポジウムにおいてシンポジストで長崎国際大学の石田秀美教授は「東洋医学は自然治癒力に頼っている医学と言われるが、西洋医学こそ自然治癒力に頼り切っている」と述べられた。そして西洋医学には東洋医学のように自然治癒力を惹起したり鼓舞したりする力はなく、ただ「頼り切っている」ということなのである。

 このシンポの司会をしていたのでありますが、全身鳥肌が立ち、この言葉ですべての疑問が氷解した思いでありました。

 解熱剤で熱を下げても風邪の原因であるウイルスを殺すわけでなく、ウイルスを殺すのは身体の免疫機能(自然治癒力の一つ)の働きで抗体を作ってウイルスを叩くのであるから、解熱剤は全く関与しないばかりでなく、むしろ免疫機能を下げてしまって治す働きはむしろ阻害されているのである。

 

<会頭講演>

 昨年6月に東京大学で行われた第66回(公社)全日本鍼灸学会学術大会で学会の元副会長で現在は顧問ではありますが、一介の開業鍼灸師である私が学術大会会頭を務めることになりあの安田講堂で会頭講演を行うことになりました。

 会頭講演のテーマは「東洋医学・西洋医学―どちらが本質治療に近いのか」であり、前記の自然治癒力の疑問に答える内容であります。いかにその要旨を示し、次回以降にその内容を順次開陳する次第であります。

 

会頭講演<要旨>

Ⅰ、はじめに

西洋医学は学歴の高さ、高度な医療設備等、東洋医学にはない優位な点多く、病態把握力は東洋医学の比ではない。しかし、治療面の多くは対症療法であり、しかも副作用を伴う。西洋医学は発展しているが、そのパラダイムは不変で、課題は多く健康寿命を大幅に伸ばすことは未だ難しい。

Ⅱ、西洋医学のパラダイム

 西洋医学が基盤としているパラダイムは、デカルト流近代合理主義・要素還元主義である。診断面では病気の原因を追究していく病因論が、治療面ではアロパチーが各々のパラダイムである。

 また、西洋医学は病気の治療が主体であり、一次予防や健康維持・増進の考えがない。健康診断は二次予防であり、ワクチンや予防接種も人の免疫力全体を亢進させるのでなく、不完全で病気を発症するリスクや副作用もある。

Ⅲ、東洋医学は非科学的なようだが本質を包含している

 東洋医学は、古典を学問的基盤にしているため発展性は乏しく、普遍性、客観性等に課題がある。が、西洋医学に比べて実は本質的な内容を内在している。それは健康増進、全人的、未病治や、風邪の際に発熱を促し、免疫力を高めること等から説明できる。そして安価で経済性と安全性に富む治療法である。21世紀こそ、東洋医学が普及することにより健康寿命が延び、医療費の削減に繋がることを科学的に証明していく必要がある。

Ⅳ、医学・医療のパラダイムシフトが予想される時代は

 遺伝子・iPS、AI等の医用工学等の急速な発展により、西洋医学は根本から変革される可能性が高い。その時には、東洋医学・鍼灸もその影響を強く受けざるを得ない。鍼灸においても古典を金科玉条とするのではなく、科学技術を最大限に利用しつつも、鍼灸治療が持つ健康維持・増進、スキンシップ、心への作用等の特徴をより発展させながら、新たなパラダイムを構築する必要があると思われる。

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