会頭講演2:はじめに

会頭講演2:はじめに

 

<西洋医学と東洋医学の立場>

 東洋医学と西洋医学の立場を考察してみると、SL1の図Aのように重篤な病気は西洋医学が強くて、「未病」に代表されるように「未だ病気にはなっていないけど体調がすぐれなくていかにも病気になりそうな状態」、あるいは「自律神経失調状態」「疲労や倦怠」などの半健康・半病人状態、あるいは健康維持・増進には東洋医学の方が優れているという認識が一般的にあり、実際に本論においても明らかにするが確かにその傾向は顕著にある。

 また、両医学の適応範囲を考察してみると、SL1のB図のように西洋医学の方が適応が広いと考えるかC図のように東洋医学の方が広いと考えるかであるが、皆様はいかが思われるだろうか。この点についても本論で明らかにしていく。

SL1

 

<西洋医学は科学的で東洋医学は非科学的?>

 何でこのような質問をするのか疑問に思う方もいらっしゃるかもしれない。当然西洋医学は科学的で東洋医学は科学とは別の世界にあると考えてらっしゃる方が一般的であろうかと思う。この質問を医療スタッフである看護師課程と理学療法士(PT)課程の学生にぶつけてみると、西洋医学はもちろん科学的で、東洋医学ははっきり「科学的でない」とほとんどの学生が答えます。

 そこで、「西洋医学が科学的ならば、なぜ病気はなくならないのか?」と質問すると、「西洋医学はまだ発展途上だから」という答えが返ってきます。では「いずれ病気はなくなるのか?」と質問すると、「わからないけど寿命は延びている」という答えが返ってきた。しかしながら、産科領域や感染症対策などで西洋医学のこれまでの功績は大きいけれどもその他の分野では功績ももちろんあるが、検査過剰や副作用などの負の部分も大きく全体的には平均寿命の延伸にはほとんど貢献していない現状がある。平均寿命の延伸に最も大きく貢献しているのは栄養がよくなったことや公害の除去、運動や食養生などの生活習慣の改善が非常に大きいのである。この点も、本論で明らかにしていく。

 

<会頭講演1>

Ⅰ、はじめに

 鍼灸師は西洋医学に対して劣等感或いはその裏返しで根拠のない自信を持っていることが多いようだ。そして鍼灸師も一般国民も「西洋医学は本質的治療で、東洋医学は対症療法」という認識を持っていることが多いのではないか。また、東洋医学だけを学び・研究している鍼灸師の中には西洋医学を深く学ぶことなく批判し「東洋医学こそ本質治療である」という人が多くいる。

近年、医学の評価はエビデンスベースであり、「効く」とか「有効である」といってもエビデンスがなければも評価されない。西洋医学においても実際きちんとしたエビデンスは少ないのであるが、東洋医学・鍼灸はもっと少ないのが現状である。そして、現在古典の記載事項がほとんど科学的に検証されてないのに関わらず、「古典は正しい」と評価しているようでは、医学的には問題外である。

西洋医学は学歴の高さ、高度な医療設備等、東洋医学にない優位な点が多々あり、そのために診断や病態把握力は東洋医学の比ではない。しかし、治療面では本質的治療はあまりなく、多くは対症療法であり、しかも副作用を伴う。西洋医学は発展してきたが、そのパラダイムは不変で、癌、糖尿病やフレイル、ロコモ、副作用等の問題など課題は多く、健康寿命を大幅に伸ばすことも未だ難しい。また西洋医学の発展には医療機器或いは新薬の研究開発等を伴うため、発展するほど費用がかかるという問題を内在している。少子高齢化が急伸する我が国では医療費の削減は非常に大きな課題であり、矛盾がある。

本稿では「治る」或いは「治す」とはどういうことか、ということを中心において論を進める。

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