不妊症と鍼灸治療-3(高プロラクチン血症に鍼灸が効く理由)
<プロラクチンとは>
プロラクチンは下垂体前葉で合成されるホルモンで乳汁を分泌する作用と性腺(女性ホルモンを分泌する)抑制作用があり、妊娠時には新たな妊娠を防ぐ働きがあるのですが、妊娠してないときに多く出ると(高プロラクチン血症)、無月経になったり、乳汁が出たりするので妊娠できないようになります。
このプロラクチンは下垂体の上部組織である視床下部の影響を受けます。視床下部ではプロラクチンの放出を促進するホルモンと抑制するホルモンがあって、その二重支配を受けているのですが、抑制するホルモンの方が強く、このホルモンはドーパミンと呼ばれています。
<プロラクチンはドーパミンの影響を受ける>
ドーパミンは脳内の重要なホルモンで「幸福ホルモン」とか「やる気ホルモン」ともいわれていて、ドーパミンが多く出ると幸せな気分になったりやる気が出てきたりします。ドーパミンが不足することで起きる代表的な病気はパーキンソン病で、パーキンソン病にかかると表情のない顔貌になり、うつ病みたいに元気がなくなります。
このドーパミンが不足するとプロラクチンの放出を抑制する働きが弱くなり、プロラクチンが多く出て血中に放出され高プロラクチン血症になります。
<なぜドーパミンが不足するのか>
問題はなぜドーパミンが不足したかです。もちろん脳出血や脳梗塞などの病気でドーパミンを作る組織や作ることを促進するホルモンを作る組織が破壊されたり機能しなくなれば当然ドーパミンが不足しますが、多くはそのような器質的な病気がなくて起きます。
ストレスはその原因の一つですし、栄養失調や栄養障害においてもホルモンの材料が不足して発症します。ただ、ストレスは誰でもある程度あるものですし、強いストレスを感じている人が全員そうなるわけではないので安易にストレスのせいにするのは問題です。例えば、高プロラクチン血症で最も多い機能性高プロラクチン血症の一つである特発性間脳性無月経はストレスや体重減少がなくて起きる病気です。
<鍼灸がなぜ高プロラクチン血症に効くのか?>
ホルモンの調節が狂う場合には自律神経の失調が必ずと言っていいほどあります。自律神経の失調はストレスなどの影響を受けて起きる場合も多いのですが、ストレス以外にも気候や寝不足、運動不足、栄養の偏りなど様々な要因で起こりえます。しかし通常は何故高プロラクチン血症になるのかわからないことが多いのです。
しかし、いずれにしろ自律神経失調がありますからこの自律神経失調をとりあえず治せば(調整すれば)高プロラクチン血症は改善します。鍼灸治療は鍼治療と灸治療は若干違いますが、いずれも自律神経を調整することができることが分かっています。
ただ、自律神経の失調といってもいろいろなタイプがあります。例えば交感神経が緊張しすぎている場合で副交感神経が正常か弛緩しているような場合もありますし、その逆もあります。また交感神経・副交感神経ともに緊張している場合、あるいはともに弛緩している場合があります。それだけでなく、交感神経が正常で副交感神経が弛緩している場合などもあり、ともに正常な場合を含めて9通り考えられます。しかし、いずれの場合も鍼灸治療を行うと正常に復するのですが、詳細は後述。 続く
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