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神経痛私考9(鍼灸はどうして治しているのか?)

神経痛私考9(鍼灸はどうして治しているのか?)

<経絡と経穴>
 一般的に鍼灸治療で治る根拠は経絡の気血の流れをよくしてとか、ツボ(経穴)の効果でというような説明がされます。しかし、医学的(科学的)には(文学的でなく)経絡は少なくとも目で見える形で発見されたわけでなく、機能的に経絡が関与する現象(経絡現象といわれる)が散見できた程度できちんと経絡を証明することはいまだにできてません。文学的に言うと経絡は経脈と絡脈を合わせたものをいいますが、「経脈は動脈で、絡脈は静脈である」というのがほぼ一致した見解であって、特別な気の流れというものではなさそうです。
 それは、「気は血とともに経脈を流れる」あるいは「経脈は深きを流れ、触れることができるのは・・・・」と動脈の拍動部が経穴名で書かれていることからも明らかです。
 経穴は経絡上の特定点と考えるので経穴の治療によって経絡と動かす(気の流れを調整する)ことの意味は曖昧なものとなってきます。

<鍼灸で治る根拠は>
 鍼と灸の治効原理(治るメカニズム)は若干違います。特に灸は経絡がない(鍼と違って深い場所を流れる経絡に灸をできない)と言われますので、灸により「気血の流れをよくする」ことは初めからあり得ません。このことからも灸と鍼の治効原理は違うことが分かりますが、もちろん機械的な鍼刺激と灸の熱刺激(実際は熱刺激だけではありませんが)では刺激の質が全く違うわけですから、治効原理が違うのは当たり前のことかもしれません。
 ただ、皮膚表面或いは皮下組織や筋肉などの軟部組織に物理的な刺激を加えて生体の反応を惹起させることは同じです。

<鍼をすると体が温まる>
 初めに鍼麻酔の研究を端緒に、この50年間くらいで分かってきた鍼の治効原理からご説明します。最も早くわかってきた治効原理は血流が促進して体温が上昇することです。サーモグラフィーという全身の体温を測定する機械があります。鍼をすると刺鍼する場所に関係なく(経絡・経穴に関係なく)、たった一本の鍼で徐々に全身の体温が上昇してくることが証明されます。体温が上昇するということは血流が促進する、あるいは滞っていた血行が改善するということを意味します(体温は血液が運ぶため)。血液は言うまでもなく栄養や酸素を運ぶ赤血球をはじめ、免疫或いは敵を攻撃するリンパ球やマクロファージなどの白血球部隊などを全身に、あるいは障害部位に運ぶ働きがあります。ですから、血行が悪かったり、滞っていたりすると「治す」という働きが鈍くなったり、働かなくなりますから、血行が良くなることは「治す」力が強くなることを意味します。
 そして、どうしてそうなるか(血行が促進するメカニズム)も東京都老人総合研究所の研究で明らかになり、メカニズムも科学的に証明されました。

<風呂でも体は温まるが、鍼とどう違うのか>
 風呂でももちろん体は温まります。しかし、風呂で暖かくなるのは皮膚の外から熱で物理的に温められているだけで、体の中から暖かくなるようにしているわけではありません。また、熱過ぎる場合には体は逆に冷やそうとします。それは外から与えられた熱エネルギーを人間は自分のエネルギーとして取り込むことができないし、熱過ぎる場合には体の組織(特にたんぱく質が)が変性して(部分的に死滅する)しまうために、そうならないように冷やそうとしますので、むしろ風呂上りに冷えてしまう結果(湯冷め)にもなります。風呂上りに皮膚が真っ赤になったり(血管を拡張させて熱を逃がそうとしている)、汗をかいたり(体を冷やすため)した場合はむしろ湯冷めを起こすために逆効果です。それだけでなく、かなりエネルギーも使うために何度も入ると「湯あたり」といわれるように疲労困憊します。鍼ではこのようなことは決して起きません。
 もちろんお風呂にも効用がありますが、ケースバイケースでの風呂の入り方(温度・時間など)が大事で、方法を間違えるとむしろ逆効果になります。

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