神経痛私考12(浅い鍼でも効く根拠Ⅱ)

神経痛私考12(浅い鍼でも効く根拠Ⅱ)

<浅い鍼でも、ツボを外しても良く効く根拠は>
 ドイツと米国の大規模実験により、通常の鍼(1cmの深さでツボに刺す)と偽の鍼(2~3mmの深さでツボを外して刺す)ではあまり有効性に差がなかったが、通常の鍼も偽の鍼のいずれも西洋医学の正規治療に比較して、有効性・安全性・経済性のいずれにも優れていたことを前述しました。
 いうなれば、「どこにどのように刺しても効きます」ということになります。事実、免許取り立ての初心者はおろか学生でもある程度治すことができることが分かっています。
 生体は、鍼灸の刺激を受けると恒常性維持機能(ホメオスターシス)を賦活して自律神経系や内分泌系を整えたり、疲労を取ったり、痛みの感受性を下げたりします。自律神経系(特に交感神経系)に緊張があると全身の筋肉が緊張しますから、交感神経の緊張が取れるだけで血液の流れも促進し、全身の筋肉の緊張が取れますので痛みの原因となっている緊張が強い筋肉に直接刺さなくてもある程度緊張がゆるんで神経への圧迫も減少して痛みがゆるむということになります。
 疲労が取れると、痛みの感受性が下がる(今までちょっとの刺激で痛かったものが同じ刺激量でも痛くなくなる)とともに気力も充実しますから少しの不都合には動じなくなります。このように、「どこにどのように刺しても効きます」の根拠は明白にあります。

<ツボに刺すことに意味があるのか>
 「どこにどのように刺しても効きます」ではツボの価値が全くなくなりますし、鍼灸師の技術とは何か、という根源的な問題も出てきます。中国の鍼灸はしませんが、日本の鍼灸は肌に触れて皮膚の反応を診て、ツボ(針を刺すポイント)を定めます。そのように皮膚の反応を診て鍼をした方がそうでない場合よりも有効であるという研究もいくつかありますし、鍼灸の専門雑誌のアンケート調査でもツボの反応を診て治療をする鍼灸師の方がそうでない鍼灸師よりも有意に来院患者数が多く(患者の支持がある)、売り上げも多いという結果も出ています。(来年、院長の小川が学術大会会頭を務める第66回全日本鍼灸学会東京大会では、この点をもっと深めて明らかにする研究テーマを設けてシンポジウムを行います)
 またそれだけでもなく私考-10で述べたように障害がある筋肉まで刺入する治療をする鍼灸師の方がそうでない鍼灸師よりも来院患者数も多く売上高も多い(同じアンケート)という結果も出てますし、その方が有効であるという研究はいくつもあります。

<やはりツボを見つけてそこに治療する技術は重要>
 また、ツボが見つけられない免許取り立ての初心者や学生でもある程度効く治療はできるといっても、免許取り立てで開業する鍼灸師のほとんどは患者の支持がなくほとんどが閉院するという現実もあり、免許取得後数年研修するなり、治療院に勤めて腕を磨いた鍼灸師は生き残ることもはっきりしてます。開業するにはそれなりの技術がなければ患者さんの支持を得られない(有効な治療はできない)ということだといえます。
 人を治療するということは、治療をする前に、訴えている症状がどのような病態で起きているのかの判断(病態把握)ができなければなりませんし、その病態の鍼灸治療適応の判断(鑑別力)ができなければなりません。このような知識・技術は学生はもちろん免許取得後の初心者では全くできません。臨床経験を積んでいかなければなりませんし、第一鍼灸学校(大学も)ではそこまでの知識すら教える時間もほとんどありません。つづく

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