東洋医学と西洋医学 どちらがより本質的治療か?-1

東洋医学と西洋医学 どちらがより本質的治療か?-1

東洋医学と西洋医学は常に対比される医学であるが、実際にはまず西洋医学ありきで、西洋医学では治らなかった、或いは治す方法がないなどの場合に限って東洋医学が用いられるケースがほとんどである。それは医師の判断はもちろん、国民あるいは患者さんの判断・医療行動も同様である。要するに東洋医学は西洋医学と対等に対比されていないと言うことである。

西洋医学は医師の学歴・社会的地位の高さ、研究成果の質と量、健康保険の適用、高度な医療機器などあらゆる面で東洋医学を凌駕している。そして、天然痘や黄熱病などの多くの感染症の発症を抑えてきた。しかしながら、癌、糖尿病、心臓疾患、肺炎気管支炎、鬱病などの精神性疾患、膠原病、自己免疫疾患、アトピー・喘息、認知症など挙げれば切りがないが未だに俺らの疾患の制圧はもちろん発症率・死亡率などを大幅に減少することはできてないばかりか、認知症や糖尿病など多くの疾患でむしろ増えてさえいる。また、要介護の高齢者も増加の一途である。

そして何よりも、西洋医学は薬、医療機器の開発・製造などに多大な費用がかかり医療費は増加の一途で、国民生活を脅かすほどである。これからますます進行する少子高齢化社会では国家存亡に関わる非常に深刻な問題である。

元々当院の来院患者さんの治療歴や経過を診ていて、西洋医学が思ったよりはるかに貢献度が低いことを感じていたが、その上でこのような問題を考慮すると西洋医学は元々根本的に大きな問題・矛盾を抱えているのではないかという疑問が生じてきたのである。

この疑問は1997年に東京ビックサイトで行われた(社)全日本鍼灸学会学術大会で企画委員長兼事務局長及び「身体を見つめる伝統と科学」と題したシンポジウムの司会を担当して2年にわたり準備(調査・研究)してきた時から明らかになってきた。つづく

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膝関節痛と鍼灸-3

膝関節痛と鍼灸-3

<下肢の筋肉、特に大腿四頭筋の筋力低下が問題>
 下肢の筋肉の力、特に大腿四頭筋(太ももの前側の筋肉群)の筋力低下が膝を痛める原因の第一です。宇宙飛行士が一週間宇宙にいて(重力がないので筋肉を使わない)地球に帰ってくると立つことさえできないほど筋力が衰えるということです。宇宙飛行士の向井さんのお話では今では宇宙にいるときは毎日機械を使って4時間くらい筋力を使うトレーニングをしているそうです。そうすると地球に帰っても大丈夫ということです。
 寝たきりになったり車椅子になりますと立つために必要な筋肉(多くは足の筋肉)を使わないためにどんどん衰え細くなっていきます。

<若者でも運動しないと立てなくなる>
 最近のニュースで20代の女性にロコモが増えているというのがありました。私が教鞭をとっている東京衛生学園で学生を使って(多くは20代)3週間寝たきりにさせた実験を以前したことがあります。広い体育館にマットを引いて寝たままにさせる生活をさせるのですが、さすがにおしめというわけにはいかずトイレには立って行ったので完全に寝たきりではありませんでした。しかし、それでも3週間で10数%も下肢の筋肉周りが減って細くなり、それ以上に筋力が低下しました。もちろん若いので、その後トレーニングして筋力は回復しましたが、20代の若さでも筋肉を使わなければどんどん衰えるということです。

<年寄りの骨折は致命傷>
 年齢がいってから骨折するとなかなか骨がつかないので寝たきり生活が長くなります。よって、骨がついたからリハビリをしましょう、と言われても宇宙飛行士のように立つことさえできない状況になります。宇宙飛行士は訓練もしていて若いですから多少のリハビリで日常生活と送れるようになりますが、80も半ばを過ぎると立つことができるまでも時間がかかります。リハビリは痛いし苦痛なのでいい加減になるし、そうなると筋力の回復も大幅に遅れます。結局寝たきりのままになり、気力も萎え、意識レベルも落ちて認知症が進行していきます。ですから年寄りの骨折は致命傷ということになります。私の父も足を骨折して寝たきりになり認知症も進行してそのまま半年後に老衰で亡くなりました。

<骨折しないようにすることが重要>
 高齢で骨折するとその回復は大変なので、骨折しないようにしなければなりません。骨を強くするにはビタミンDやカルシュームを豊富に含む食品をとることが重要ですが、偏った食事やカップ麺だけの食事ならともかく通常の食事を摂っていればそれらが不足することはめったにありませんのでサプリメントなどは必要ありません。それよりも骨を強くするには筋肉を強くすることが重要なのです。つづく

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<鍼灸治療で鬱病が治るか?―7>

<鍼灸治療で鬱病が治るか?―7>

 

<半年ぶりにかかった秘書からの電話>

 前回ご紹介した、鍼灸治療でどんどん良くなり、抗鬱剤などの薬を自己判断で減量し、週一回の鍼治療受診もしていただけなかった会社社長の秘書から半年ぶりに電話があり、「社長が亡くなったので先生も葬儀に列席していただきたい」ということでした。私は先代の会長(社長の父親でご高齢)も存じ上げているので、「社長でなく会長の間違いでは」とお聞きしたら確かに社長とのことでした。まだ50歳で半年前には「鬱」以外の病状は全くなかったので「しまった」という想いがこみ上げてきました。もっと薬を続けるなり鍼灸治療を続けるなりもっと強く言って説得していたらという後悔しきりでした。

 

<鬱病患者の自殺のタイミング>

 鬱病患者が問題なのは自殺することです。しかし、家も出られないほど落ち込んでいるときはその心配もありませんし、鬱病が回復して元気に仕事しているときも全く問題ありません。しかし、全く落ち込んでいた患者が家を出るくらいの元気が出ると、それは同時に自殺する元気も出るということで、この時期が危ないのです。ただ、鍼灸治療に来られるときはその段階を超えている場合が多いので治療しているときはほぼ大丈夫です。

 本当に危ないのは元気な状態から落ち込み始めた時です。「人生がつまらなくなったり」「何事にも興味が無くなった」のがサインですが、ちょっとでも「死」を意識した言動があったら非常に危ないのです。

 実はこの患者さんは大学の先輩で以前からの知り合いで、同期の方もたくさん治療にいらしてくれていました。その人たちに呼ばれての飲み会でこの患者さんが「人生面白くなくてもう死んじゃおうかなあ」と言われたので、鍼灸治療に誘ってきたのが発端ですが、残念ながら元気になったらいらっしゃらなくなってしまったので鍼灸治療は「鬱」に有効だけどきちんと治療後も管理ができないのが問題です。

 

<ちょっとでも死を意識した言動があったら本当に危ない>

 結婚を控えている30歳前後の若い鬱の男性患者さんですが、神経内科で鬱病の治療を受けながら週一回の鍼灸治療を行って一見元気になったように思われたのですが、問診で「最近死にたいなと思うことがちょっとだけありました」と言われたので、神経内科では少し畑違いなので知り合いの精神科の医師にご紹介して診てもらったところ、「自殺念慮」があるのでこちらで入院させて治療しますというご回答を得ました。数週間入院して元気になって退院して当院に来院されましたが、以前よりかなり改善していました。鍼灸治療を2~3ヶ月行ってすっかり元気になって来院されなくなりましたが、その後ご結婚され、子供も出来て元気にしているということをご家族からお聞きしました。

 

<餅は餅屋>

精神科の医師からは以前の薬ではだめで、違う薬で治療しますという報告を受けていましたので、やはり専門医は違う(餅は餅屋)という印象を強く持ちました。以前内科医との勉強会で、内科でも「鬱病」の患者は診ることができるけれども軽度の鬱しか実際に見ることができないし、たくさんある薬の使い分けは専門家しかわからないということを伺っていたので、鬱病だから「抗鬱剤」を使えばすべてよくなるということでは絶対ないという印象を持ちました。つづく

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膝関節痛と鍼灸-2

膝関節痛と鍼灸-2

 

<ロコモーティブ・シンドローム>

 通称「ロコモ」とも言いますが、ロコモーティブとは移動するということで、ロコモは移動するのが難しい症状ということです。難しそうですが、実際は腰や膝などの下肢の障害のことで腰や膝が悪ければ移動する(歩く)ことが困難になるという意味です。その中で最も多いのが膝の障害です。基本的には運動不足により下肢の筋力が低下するのが原因です。その他では「フレイル」という病態も関係しています。

 

<動物性蛋白質の摂取不足によっても筋力低下になる>

 「フレイル」とは高齢になることで筋力や精神面が衰える状態のことで、高齢者がかかえる筋力低下による転倒の危険性の増大などの身体的問題のみならず、認知機能障害や鬱病などの精神・心理的問題、独居や経済的困難などの社会的問題までを含む概念、と定義されています。心理的・社会的問題はさておいて筋力低下は運動不足のみならず、動物性蛋白質の摂取不足によってもなります。いうなれば肉・魚・卵・牛乳の類の摂取不足です。昔、出光の土光さんがメザシなどの質素な食事をして元気で長生きなので、高齢になったら質素な食事の方が良いという風潮がありました。実はこれは間違いで、土光さんも自宅ではそうでも会食の機会が多かったと思いますが、その時には肉をふんだんに食べていたそうです。また、動物の肉は「がんをつくる」とも言われ癌になりたくないのなら動物の肉を若いうちからたくさん食べないようにと推奨されているのは事実です。

 

<高齢になったら肉を食え>

 これは最近よく言われる言葉ですが、若いうちから肉食の人の方ががんになりやすいのも事実のようです。しかし動物性たんぱく質を取らないと筋肉や血液の材料が不足して筋力が低下して「フレイル」状態になるのも事実です。ではいくつくらいから意識して肉を取るようにしたら良いのでしょうか?癌になる人が多いのは50代60代です。しかし、がんは食生活が変わったからすぐになるわけではありません。10年20年かけての良くない生活習慣(食事・運動・喫煙・飲酒・心構えなど)の積み重ねで遺伝子に問題が生じて起きる病気です。ですから、50代60代にがんになる人の問題となる生活は30代40代の生活なのです。よって、50歳になったらどしどし肉を食べろという研究もありますが、実際に筋力低下を実感するのは60代のようですので60代になったら意識的に肉(魚・卵・牛乳も含む)を多くとったらよいと思います。また、同じ肉食でも牛や豚の肉はがんをつくりやすく、魚や鳥の肉はがんをつくることが少ないので若いときは牛や豚は少なくして鳥や魚と牛乳・卵を多く食べるのも一つの方法です。 つづく

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<鍼灸治療で鬱病が治るか?―5>

<鍼灸治療で鬱病が治るか?―5>

 

<鍼灸治療では劇的に効くこともある>

 鍼灸治療は、何回か治療を重ねて少しずつ良くなっていくというイメージをお持ちの方は多いと思います。それは、たぶん慢性の症状を治療することが多いからではないかと思います。西洋医学の治療を受けたけれども治らなくて鍼灸治療を受診した、というケースが以前は多かったからです。「慢性」というのは、言い換えると「治らなかった」という意味ですので、慢性の症状を改善すること自体大変難しいことなので、少しずつでもよくなればVery good なのです。ですから急性症状には劇的に鍼灸が効くことも多々あります。

 

<一回の治療で劇的に良くなった?症例>

 「50歳の男性の消化器外科助教授(医師)で5年前より不眠・早期覚醒が起こり、鬱気味になり回復と悪化を繰り返していたが、3ヶ月前より症状が悪化して、2週間休職して職場に復帰したが倦怠感が強く、疲れやすく、便秘などの症状があり、体重が3㎏減った。抗鬱剤と精神安定剤を服用中」という患者さんが見えました。一目で鬱をわかるほど元気なく、うつむいていて声も小さかった方です。治療が終わってお着替えになって受付に戻られたときに「いやあーみんな元気ですか、楽しいですね」と大きな明るい声で話され、顔色もよく全く別人に見え「誰だこの人」と一瞬戸惑い、先ほどの鬱の患者さんだと気が付くのに数秒かかりました。

 もちろん、症状は劇的に良くなったように見えましたが、むしろ躁状態になっていたので、決してよくなったとは言えないのですが、一回の鍼治療で精神的な症状がこれほど劇的に変わったのは初めてだったのでびっくりしました。鍼灸治療でも精神疾患が劇的に治るかもしれないと思ったほどです。

 Dr.ブラックのように全国から患者さんが来るスター外科医なので大変忙しく、良くなると治療に来なくなり、いらした時は悪化しているという状態を繰り返して、こちらが希望する十分な治療ができないまま、来院されなくなったので最終的にどうなったかはわからなった症例です。

 

<鬱病のコントロールが効かなくなった症例>

 数百人を人を使う企業の50歳の社長(男性:二代目)で、双極性の症状を持っていて以前より時々鍼灸治療(疲労・睡眠不足などで)を行っていた患者さんです。躁状態の方が強く、今回はかなり重症なうつ症状で来院されました。鍼灸治療でどんどん良くなり、そのために抗鬱剤などの薬をご自分の判断で減量されましたが、症状が改善したので薬についてはコメントしませんでした。ただ、「この病気は良くなってもまた悪くなる可能性があるので、薬は嫌ならしょうがないけど鍼灸治療は良くなっても週一回来てください」と強く申し上げましたが、お忙しい身でもあり、良くなれば治療の優先順位はご自身の中でどんどん下がりますから、全くいらっしゃらなくなりました。そしたら半年後、その会社の秘書から電話がありました。 つづく

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膝関節痛と鍼灸

膝関節痛と鍼灸

<膝関節痛は鍼灸の患者さんで一番多い>
 鍼灸院に新規に来院する患者さんのトップは腰痛です。次が頸・肩こりで膝関節痛は三番目くらいになります。しかし、腰痛はもちろん病態により変わりますが通常‘ギックリ腰’と言われる急性腰痛は場合によっては1回で治り、平均でも3回くらいで治るのが普通ですし、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などすべての腰痛を含めても平均5・6回で治ります。肩こりは基本的には一回で治ります(楽になる)が、デスクワークやコンピューターを使っての仕事ではストレスの影響もあって1週間たつとまたコリが出てきて、予防の体操法や職場の環境(机と椅子、ディスプレイとキーボード)を整えることでもかなり改善することはできますが基本的には仕事をやめない限り決して治らないものです。ですから、コリがたまると来院するという方が多いのです。
 一方、膝関節痛は運動不足(筋力低下)・肥満・関節の変形などがベースとなっていて、鍼灸治療をして楽になっても、短期間では治らないものですし、週一回の治療では治りにくく(肩こりほどは一回の治療での改善度は低いので)、週2~3回の治療が望ましいことがあって今来院している患者さんの中では最も多いという結果になります。

<年配の女性に最も多いのは膝痛>
 膝痛のベースに運動不足(筋力低下)がありますが、膝が痛いために歩くのもつらく、階段昇降は大変で、その上に膝周りの筋肉、特に大腿四頭筋を鍛える体操(スクワット)などはもってのほかということで、ますます運動不足による筋力低下に拍車がかかります。
 高齢の女性がクラス会など同年配の人と会食をしたり、旅行に行くと膝が悪い人が多いのにびっくりされるようです。
 女性はもともと運動嫌いの方が多く、筋力が不足している人が多いのですが、今までなんともなかったことから、運動の重要性を言っても真剣にやろうとしない人が大半なのが原因かと思います。

<膝の痛みは車椅子、寝たきりになりやすい>
そして、膝痛は直ちに命に係わる病気ではないので、運動の実行を後回しにする人が多く、そのためどんどん筋力が低下して歩くことさえ困難になり、そこで初めて後悔して頑張っても、もう時すでに遅しで、オリンピック選手になるための努力くらいをしなければ回復しないレベルになって、ほとんどの人は車椅子、寝たきりの状態に一直線でなってしまいます。女性の方が「平均寿命-健康寿命」の何らかの障害を抱えて自立できない期間が男性よりも遙かに長い原因がここにあるのではないかと思います。 つづく

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<鍼灸治療で鬱病が治るか?―4>

<鍼灸治療で鬱病が治るか?―4>

<鍼治療は非常に臨床効果が高い>
 鍼治療は非常に臨床効果が高い治療であることを欧米の研究で実証されたことをその3で述べました。欧米では灸治療がほとんど行われてないので灸治療の研究はほとんどありませんが、臨床効果が高いという面では鍼治療とあまり変わりはないのではないかと思われます。いずれにしろ、鍼灸治療のシステム、傾聴的態度の問診はもちろん、特に体にあるいは悪いところに触れて、かつ刺鍼あるいは施灸することと、全身の調整をして自律神経系を整えるなどを行う治療システムは患者さんの心身両面に非常によく作用するということのようです。
 今の西洋医学のお医者さんは客観主義ゆえにデータ中心でコンピューターの画面ばかり見て患者さんの悪いところはもちろんのこと顔さえ見ないひどい医師もいるようです。

<医師(鍼灸師)と患者さんの信頼関係が重要>
 外科手術において、担当の医師を患者さんが信頼している場合とあまり信頼していない場合では手術結果が違うというエビデンスがあります。手術の際には麻酔がかかっているし、担当医が執刀するとは限りませんので実際には信頼している医師が執刀者でない場合も多々あるわけですが、そうであっても担当医を信頼している場合には結果が良いとのことです。
 医師(鍼灸師)との信頼関係は、顔を見てよく話し合ってこそ生まれるものなので顔を見ないで一方的に画面を見て話す医師との信頼関係はたぶん生まれないと思います。そして、悪いとこに手を当てる、スキンシップの重要性も前回述べました。

 脱感作療法というアトピーなどのアレルギー疾患を治す治療があります。私が昔病院の中に鍼灸治療室をつくっていた時、その病院に全国から患者さんが集まる有名なアトピー専門のお医者さんがいらっしゃいました。全国から重症の患者さんが集まるのに関わらず、そして行う治療は全く特別なことのない脱感作療法です。しかし、その治癒率は非常に高くまさに名医でありました。見学に行くと、この先生は子供と話すときは膝ついて子供と同じ目の高さで、きちんと丁寧にしてはいけないこと、やった方が良いことを子供に分かるように説明し、親に対しても同様に丁寧に説明していました。ひどいところは紙を渡して、「よく読んで実行しなさい」で終わりですが、そのようなところは治癒率が非常に低いのです。臨床で大事なのは薬や治療法だけではなく、治す心を伝えることだと思います。
つづく

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<鍼灸治療で鬱病が治るか?-3>

<鍼灸治療で鬱病が治るか?-3>

 

<鍼灸治療による心理効果は沢山ある>

 その2で述べましたように鍼治療により、1、刺された部位の筋緊張が取れ、2、交感神経の抑制により全身の筋肉の緊張が和らぎ(1・2によって逆制止理論で心の不安も楽になる)、3、鍼灸師より病態の説明を受けることにより、病気(死)への不安が解消されるという三つの効果が得られます。実はそれだけでなく、鍼灸治療により他の心理効果も多々あります。

 

<人は悩みや苦痛を理解してもらうだけで良くなる>

その一つは、「人は自分以外の人に自分の悩みや苦痛を理解してもらうだけでその苦痛が半減する」のです。洋の東西に関わらず、臨床の現場では問診あるいは医療面接の場において患者さんの訴えを傾聴的な態度で聞くことにより、患者さんはその苦痛を和らげることができるのです。

 

<治療を受けたと感じるだけで良くなる>

 二つ目に、本当には効くか効かないかを問わず「治療を受けた」と患者さんが実感するだけで苦痛は半減します。治療(薬も)の有効性を検定する時に、その治療をした群と全く治療を受けなかった群を比較して治療をした群の方が有意に有効性が高かったとしても、その治療が有効だとは言えないのです。それは、患者さんの方で治療を受けたことによって満足感が生まれ効果があったと錯覚してしまうのと、治療を受けなかった群の方は治療をしてもらえないという不満がでて、マイナスに働くからです。これを臨床効果とも言います。だから実際に治療の有効性を検定する場合には比較するには無治療ではなく、全く有効性がないと思われる偽治療(プラセーボ)をする群を対照にして比較するのです。

 

<触れられるだけで良くなる>

 まだあります。三つ目は触れる(触れられる)ということです。鍼灸治療はその性質上治療面において患者さんに触れることが多いし、診断面においても脈を診たり、お腹や手足、あるいは痛いところをよく触診します。人は触れられるだけで心理的に楽になることが多く、特に悪いところを触れられたり、診断のために触れられるとそれだけでかなり楽になります。愛の告白もそうですし、リストラの時も肩や腕を取りながら話すと受け入れられることが多いと言います。スキンシップが思う以上に効果的ということです。

 

<臨床効果はバカにならない>

 科学ジャーナリストのサイモン・シン共著の『代替医療のトリック』が数年前に刊行されましたが、その中で鍼治療はいの一番に効かない治療と断定されました。それは、詳細は省きますが、ドイツと米国での大規模研究において真の鍼治療(深い)と偽の鍼治療(浅い)を比較すると有効性にほとんど差が無いので、鍼治療は効かないと断定したのです。しかし、大事なことが抜けていました(あるいは意図的に)。真の鍼治療も偽の鍼治療もともに西洋医学の最新治療よりも有効性・安全性・経済性のすべてで有効だった事実です。要するに鍼を深く刺入しても浅く刺入してもほぼ同等の効果が得られた、ということなのです。結論を言えば、鍼治療は非常に臨床効果が高い医療であるということです。つづく

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脳腫瘍の初期・中期では頭痛はない!!?―6

脳腫瘍の初期・中期では頭痛はない!!?

 

<痛みは脳の勘違い?!>

 「痛みは脳が勘違いあるいは誤作動した結果起きるもの」という脳科学者がおられます。確かに、痛みは最終的に脳で認知するわけですから、脳の誤作動や勘違いということは当然考えられますが、すべての痛みの原因がそうであるとはとても考えにくいのも事実です。

 

<水を塗っても痛く、赤く腫れる?>

 昔の心理学での実験ですが、催眠化(催眠をかけた状態で)でこれから硫酸をかけますと信じ込ませて水を皮膚に塗布すると不思議と赤く腫れて痛くなるのです。反対に硫酸を水と称して塗布すると赤く腫れることは腫れるのですが大したこともなく痛みも軽いのです。こんな実験は、現在では倫理的な問題でとてもできるものではなく追試はできないのですが、化学的な反応では考えられない現象が脳の作用によって起きてしまうということです。

 

<痛みの感受性の個人差は200倍違う>

 痛みは、痛みを起こすような刺激(侵害刺激という)が生体に加わると痛みを起こすということですが、侵害刺激になるかどうかは生体の痛みへの感受性によって大きく変わります。例えば、興奮して高揚しているときに「頑張ろう」と肩を強く叩かれても痛みは全く感じないか気にならないけど、静かにしているときに突然「頑張れよ」とばかりに肩を強く叩かれたら「何をするんだ」という気持ちになりませんか。

 痛いのではないか、という意識が強ければ痛みは倍増しますし、全く意識しなければ全く痛まないこともあります。その意識の差によって同じ刺激に対する感受性は200倍も違うといわれています。

 

<心頭滅却すれば火もまた涼し、は本当か?>

 激しい痛みがあって、そこに信頼できる医師がいて、その医師が生理的食塩水を「モルフィネ」と言って注射して、「すぐ痛みがなくなるよ」というと本当に痛みが消えるか劇的に軽くなるという事実が、特に戦時中に多くあったということです。本人が信じ込めば痛みが脳の働き(誤作動?勘違い?)によって激減するということです。

 心頭滅却・・も、心をコントロールできる人ならば本当にできるそうで、僧侶の修行にもあるようです。

 

<先生に鍼を打ってもらった夢を見たら治った?>

 「先生に鍼を打ってもらった夢を見たら治った?」という電話があって、予約をキャンセルされた方がいました。その他にも、「看板をみたら治った」とか、「先生の顔をみたら治った」などという方はたくさんいらっしゃいます。治療効果における心理的要素は想像以上に大きいものと考えられます。全身麻酔下の外科手術においても主治医(執刀医かどうかはわからない)を信頼している場合と信頼があまりない場合を比較しても治癒率や術後の改善度合いが違うという研究報告もあります。患者さんとの信頼関係の醸成こそが治癒率アップにつながる一番大切なことであることは間違いないでしょう。

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<鍼灸治療で鬱病が治るか?-2>

<鍼灸治療で鬱病が治るか?-2>

 

<鍼治療により三つの抗不安効果がある>

 鍼治療により、1、刺された部位の筋緊張が取れ、2、交感神経の抑制により全身の筋肉の緊張が和らぎ(1・2によって逆制止理論で心の不安も楽になる)、3、鍼灸師より病態の説明を受けることにより、病気(死)への不安が解消されるという三つの効果が得られることにより、精神的にかなり楽になります。抗不安剤(マイナートランキライザー)や向精神薬(メージャートランキライザー)でも精神的な不安や刺激に対する感受性が抑制されますが、抗不安剤や向精神薬などの精神安定剤はかなりの副作用があります。

 

<精神安定剤の副作用>

 精神安定剤は脳に余計な化学物質が入らないようにしている脳の関門(BBB)をすり抜けて脳の中に入っていき下記の様々な副作用を呈します。

 ① 自律N症状:口渇、便秘、頻脈、血圧低下、鼻閉、流涙、倦怠、尿閉、起立性低血圧等

 ② 椎体外路症状(パーキンソンニスム):手足の振戦、筋強直、仮面様顔貌等

 ③ 中枢N抑制症状:睡気、脱力感、自発性低下

 ④ 肝障害:肝機能障害、細胆管性肝炎、黄疸、肝実質障害

 ⑤ 心電図異常:T波の異常、STの下降、PQ時間延長、頻脈、期外収縮、心ブロック等

  ⑥ 内分泌症状:乳汁分泌、食欲亢進、体重増加、肥満、無月経等

 ⑦ 皮膚症状:発疹、アレルギー性皮膚炎、日光過敏症、口内炎、蕁麻疹等

 ⑧ 造血器障害:貧血、血小板減少、顆粒球減少、

 ⑨ その他:痙攣誘発作用、眼障害、興奮、喘息の誘発、不眠等

よって、服用する時にはいつかは止めるつもりで服用して症状が安定したら、少しずつ減量していく(症状が悪化する恐れはあっても)覚悟が必要です。マンネリと服用を続けていくと依存性(薬がないとダメになる)や習慣性(同量だと効かなくなって服用量が増える)という問題もあって副作用が重大な問題となってきます。程度の問題はもちろんありますが、この点は麻薬や覚せい剤と何ら変わりがありません。

 

<鍼治療には副作用がない?!>

 鍼治療にはごく稀に出血したり、刺激過剰による体のだるさなど技術的な問題もありますが、多少の副作用はあります。しかし、薬の副作用とは比較にならないほどの軽微でありますし、熟練者ではその副作用も少なくなります。

 幾つかの治療の有効性を比較判断する場合には有効性のみならず、安全性(副作用)や経済性なども同時に判断材料にしなければなりません。有効性は強いけど副作用も強ければ(病気の原因は排除したけれども、その結果患者さんが廃人になってしまうというようでは)使い物になりませんし、オプジーボのように何千万円もするような薬を乱用すれば患者自身のみならず国の経済が破たんしますので大問題です。

 この点、鍼治療は有効性が多少劣っても、副作用がない分を加味すると非常に高い有用性(有効性―副作用)がありますし、安全性・経済性が非常に優れていますので精神安定剤を使う前にぜひ鍼治療を試していただきたいものです。そのことによって国の財政に貢献できると我々は信じていますが、なかなか大規模な研究することは費用面でできないのが現状です。つづく

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