25、まとめ
総じて、本書はベストセラー作家らしく、売れるように一般受けするセンセイショナルな結論が先にあってそれに合わせて作られた様に我々には思える。本論をまとめる。
Ⅰ、本書で検討された論文には意図的と思われるような選択バイアスがある
論文そのものの選択バイアスと、内容面の選択バイアス
Ⅱ、浅い鍼も深い鍼も経穴でも非経穴でも効果は同じ、ではなくそうでない場合もある し、鍼の哲学も崩壊しない
Ⅲ、RCTだけで鍼の臨床効果を検証するのは難しいのではないか
Ⅳ、鍼の有効性については認められつつある
Ⅴ、鍼はプラセボ効果(自然治癒力)を非常に高めることができる治療法である
終わりに当たって、古典における資料を頂いた第二次経穴委員会委員の小林健二氏に深く感謝いたします。
<引用文献>
1)サイモン・シン、エツァート・エルンスト、代替医療のトリック、新潮社 2010(青木薫訳:原本の出典:Simon Singh & Edzard Ernst. Trick or Treatment: Alternative Medicine on Trial,2008 )
2)Mike Cummings:Modellvorhaben Akupunktur – a summary of the ART, ARC and GERAC trials:Acupunct Med 2009 27: 26-30
3)Daniel C Cherkin et. al:A randomized trial comparing apuncture ,simulated acupuncture,and usual care for chronic low back pain:Arch Intern Med2009 may 11;169(9):856-66
4)Karen J.Sherman 「腰痛に対する鍼治療の臨床試験-RCTは鍼の効果について何を教えているのか?」エビデンスの基づく腰痛症の鍼灸医学 p65-74 全日本鍼灸学会編2010
5)後藤順子他「基本健康診査受診者のがん罹患と生命予後に関する研究」厚生の指標第53巻2号 2006/2
6)全日本鍼灸学会編「エビデンスに基づく変形性膝関節症の鍼灸医学」医歯薬出版2007
7)宮本俊和他「マラソン後の筋痛と筋硬化度に対する円皮鍼の効果」日本東洋医学会誌第54巻 5号 2003
8)古屋英治他「ランダム化比較試験による筋疲労の回復に及ぼす円皮鍼の効果」全日本鍼灸学会雑誌第59巻4号 2009
9)宮本直他「変形性膝関節症に伴う痛みと運動機能に対する鍼治療の効果」全日本鍼灸学会雑誌第59巻4号 2009
10)A.White et.al 「Acupuncture treatment for chronic knee pain: a systematic review」:Rheumatology 2007 46(3) 全日学誌第57巻2号 2007
11)伊藤里子他「ランダム化比較試験を用いた高齢者の慢性腰痛に対するトリガーポイント鍼治療の有用性の検討」全日学誌第59巻1号 2009
12)日本プライマリ・ケア学会誌第23巻1号 2000 p44-45
コメント