花材:入才ラン・リンドウ・ケイトウ・コンパクタ・カーネーション・スプレーマム
今週のお花の注目は「入才(ニューサイラン)」。お花ではなく葉物にスポットを当てます。通常、葉物は主役となる花の添え物として扱われて、脇役どころかエキストラ、あるいは背景くらいの役割であることが多いのですが、ニューサイランは時として立派に主役となる存在感の強い花材です。
剣のようなスラッとした細長い葉が特徴です。1m以上にもなる葉は硬くピンと突き立ち、それが株元から扇状に付きます。葉の色は銅色、赤色、紫色の他、クリーム色や黄色の斑入りのものや、緑色にクリーム色の縞や銅色にピンク色の縞がはいったものなど様々な模様のものがあり、渋く落ち着いた色彩のものから非常に目立つ派手なものまでバラエティーに富んでいて多彩です。花の時期は梅雨の頃から夏にかけて。花茎を長く伸ばして枝分かれしたその先端に、筒状でおとなしい雰囲気の花が、ややまとまって咲きます。葉のカラフルな色もさることながら、葉を折ったり曲げたり捻じったり、果ては裂いたりしても枯れないのでアレンジしやすく、生け花やフラワーアレンジメントなどによく利用されています。
ニューサイランはニュージーランドが原産で、学名をPhormiumと言い、リュウゼツラン科フォルミウム(マオラン)属に属する常緑多年草です。分類は体系によって色々な記載があり、ユリ科とされているものや、リュウゼツラン科から独立させたニューサイラン科とされているものもあり、他にもキジカクシ科、ススキノキ科などされているものもありました。(※ 私には正確なことはわかりません)
ニューサイランは、狭義にはフォルミウム・テナックス(Phormium tenax)のことを指すそうです。これは赤い花を咲かせ、従来からニューサイランと呼ばれて栽培されている種です。葉から非常に丈夫な繊維が採れるので、ニュージーランドではこれで麻を作るそうです。そのことから、ニューサイランにはマオラン(真麻蘭)とかニュージーランドアサ(新西蘭麻)といった別名があります。葉から採った繊維からは、織物やマットが作られたり、漁網なども作られるそうです。属名のフォルミウムはギリシア語で籠(かご)を意味するフォルモスに由来し、 葉の繊維で籠や網を作ったことによります。
その他にも、ニューサイランの根は焼いてすり潰してシップ剤にされますし、花茎は筏(いかだ)を組むのに使われます。また花からは蜜が採れ・・・。このようにニューサイランは非常に有用な植物であるので、ニュージーランドでは観賞用としてだけでなく作物としても扱われ、経済を支える重要作物となっています。日本へも元々は繊維を取るために輸入されたようですが、今は主に観葉植物として出回っています。
テナックス(P. tenax)の同属にフォルミウム・クッキアナム(Phormium cookianum)という種があります。これは黄緑色の花を咲かせるテナックスの近縁種なのですが、こちらの方がカラフルな色をしていて観賞用には適しています。最近では両者をかけ合わせて作った園芸品種も多く出回っており、明確な区別も付きにくいため、一般にはテナックスとクッキアヌムとその交配種も含めて、すべてニューサイランと呼ばれているそうです。
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