花材:フリージア・ピット・イタリアンルスカス・アルストロメリア・ゼンマイ・マム・マーガレット
初めて見る色の「フリージア」をいただきました。フリージアは、甘い香りのする花として、金木犀やバラと並んで人気のある花のひとつです。今まで黄色いフリージアしか見たことがなかったのですが、これは花の根元が黄色く花弁の先が赤くて、その間がグラデーションになっています。珍しい色合いですね。
フリージアはアヤメ科フリージア属に属する多年草です。南アフリカのケープ地方が原産で、その仲間は南アフリカから熱帯アフリカあたりに分布し、世界でもアフリカ大陸にだけ存在する小さな種です。暖かいところが原産ですが、霜が降りなければ露地でも冬越しできる半耐寒性の球根植物です。原種は10種ちょっとあると言われていて、それらには強く甘い香りを漂わせるものや香りの全く無いものもありますが、いずれも小さく可憐な花を咲かせ、岩陰や乾燥した土地に目立たずひっそりと生息しています。フリージアは多くの球根植物と同じ様に、その時の条件によって種子繁殖と栄養繁殖のどちらかで子孫を残すことができるので、南アフリカの過酷な環境でも生き延びて来られたのだそうです。また、それぞれの原種は、近くに異なる品種が無いため、交じり合うことなく純粋品種を保っていたそうです。
そんなフリージアが発見されたのは、18世紀中頃の南アフリカでした。このとき発見者であるデンマークの植物学者エクロン(C.F.Ecklon)が、その花に彼の親友であるドイツ人医師フレーゼ(F.H.T.Freese)の名前を付けてヨーロッパ紹介したことからフリージアという名前になったと言われています。ヨーロッパに渡ったフリージアは、1878年にイタリアで最初に交配され、その後イギリス、さらにはオランダで盛んに改良が行われるようになりました。
現在オランダには150種以上の園芸品種があるそうです。温室で作られるフリージアは、草丈が1メートル以上にもなり、小さく可憐な原種からはおよそ想像もつかない大きさになっています。これには訳があって、オランダでのフリージアの切り花単価は重いほど高いのだとか・・・。大きく品種改良されるのも納得の理由ですね。
もちろん草丈以外にも品種改良はされていて、日本ではスタンダードな黄色い一重のフリージア以外あまり見かけませんが、実はとてもたくさんの花色があるそうです。原種の白・黄色・濃ピンクにはじまり、改良品種には紫、青、薄ピンク、オレンジや赤、珍しい茶色などがあり、しかもそれら単色だけではなく複色や暈しなどもあります。また、一重咲きだけでなく八重咲き、半八重咲き、中輪、大輪、巨大輪の花と実に様々です。今でも新品種が次々と作り出されているそうですが、フリージアは病気に弱いので、新品種が誕生し市場に出回っても、しばらくすると無くなってしまうのだそうです。日本で珍しい品種を目にすることが少ないのも、弱くて品質管理が難しいからかもしれませんね。
ところで冒頭でも書きましたが、フリージアの特徴はなんといってもその甘い香りにあります。春の香りを強く漂わせる蘭に似ていることから「コウセツラン(香雪蘭)」という別名もあるくらいです。原種にある黄色や白色のフリージアは金木犀のような甘い香りを強く放ちますが、品種改良されたその他の色のフリージアは、やや甘酸っぱい果物のような香りはしても、それほど強くは香らないそうです。今回いただいたフリージアの香りはさりげなく香る程度。治療院にはこのくらいが好ましいかもしれません。
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