花材:カリン・草札玉・ベロニカ・クルクマ・モカラ・キイチゴ
今週は実物の「カリン」です。
カリンは果実に含まれる成分が咳や痰など喉の炎症に効くと言われていて、昔から咳止めの民間薬として焼酎に漬け込んだカリン酒や、砂糖や蜂蜜漬けにしたカリンの果実が利用されてきました。最近ではよく“のど飴”に使われていますよね。かつては我が家でも、母が梅酒と同じようにカリン酒も漬けていました。その時に見た黄色い大きなカリンとはずいぶん姿形が違います。
カリンは学名をPseudocydonia sinensisといい、中国東部原産のバラ科ボケ属の落葉高木です。カリンは成長していくと樹皮がところどころウロコ状に剥がれ落ちてなめらかな黄褐色になり、その木肌はとても美しく、4~5月には5枚の花弁からなる直径3cmほどの白やピンク色の花を咲かせます。
花が終わると実が生ります。今回頂いたカリンは生り始めの未熟な実のようです。未熟な実には御覧のように表面に褐色の綿状の毛が密生するのだとか。
その後、成熟してくると楕円形で10~15cmほどの大きさになり、10~11月に黄色く熟します。熟した果実は表面がワックスを塗ったようにベタベタした感じになり、芳しい香りを放つようになります。
カリンは花や果実だけでなく樹皮・新緑・紅葉も非常に美しいため、中国では古くから薬用とともに観賞用としても利用されてきました。また収穫した果実は、部屋に置くと部屋中がその香りで満たされるほどであることから、衣類に香りを付けたり、室内に置いて芳香を楽しんだりすることにも使われていたそうです。
日本への伝来時期は不明ですが、平安時代までには渡来していたと言われていて、中国と同様に鑑賞用や薬用などに利用されていたようです。また、鑑賞価値が高く、果実の実用的価値も高い樹木なので家庭果樹として人気があり、鉢植えや盆栽にも仕立てられています。今回のように生け花に使っても、面白い花材になりますね。
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