学会

東洋医学では眼精疲労をどのように捉えているか

 『素問』には「肝の穴は目」とあり、また「人間の通常の決まりとして、すべての経脈は上って目に属している。およそ人が夜になって床に入ると、多くの血は肝に入ってしまうが、目覚めている時は、目は血の精気によって視るという働きができる」とある。つまり、肝の状態がよく現れるのは目であるが、五臓六腑の精気はすべて上って目に注いでいるので、目の異常は肝だけではなく他の臓腑の病変も反映していると考えている。
また、目の働きは血の精気によるものとしており、その血に関しては『霊枢』に「肝は血を蔵してそれを調整している」、また「肝気は目に通じている。肝の機能が正常であると、視力が充分で五色をハッキリと見分けられる」との記載がある。このように目の働きは肝血の滋養に依存していると考えている。
さらに、『素問』には「肝は筋を主る」とあり、また「肝の表徴は爪に現れ、それが養うところは筋」「食物が胃に入って、その精微の気を肝から散布して、営養が筋に侵透していく」とある。つまり、筋もまた肝血の滋養を受けていることを指しており、肝の血が充足していることで筋が養われ、その栄養を得てはじめて運動が機敏に力強く行えると考えている。
さて、目が正常に動くためには、目や視神経への十分な血流と、神経や筋肉の精緻な反応が必要である。眼精疲労はそれが損なわれた状態であり、上記の東洋医学の概念を踏まえて考察すると、肝血が不足すれば目や視神経に供給される血液の不足や栄養障害により目が疲れやすくなり、目のかすみ・ドライアイ・目蓋がピクピクするなどの症状が現れ、肝と腎の陰液が不足すればドライアイ・目の充血・視力低下などが現れる。また肝気が滞れば肝気の失調により視神経・血行・眼球や目の周りの筋肉運動の制御などが失調し、目の疲れや眼精疲労になる。これは強いストレスや緊張の持続で起こり、「通じざれば即ち痛む」と言われるように、気の流れの停滞により目痛・頭痛なども伴いやすくなる。消化吸収や代謝をつかさどる脾気が弱く精微の気を取り入れらないと、肝から筋への栄養が不足し、目の機能低下が現れる。いずれも肝が一番深い関係にあり、目の疲れ・眼精疲労は、肝の気血の失調と捉えることができる。
東洋医学で眼精疲労は、西洋医学でいう肝臓とは違うが、東洋医学の概念でいう“肝”が弱ることで起こると考えているので、多くは体調を整え“肝”を補う治療が選択されるだろう。

(2019年記)

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。