花材:菜の花・麦・ディアネラ・ゴットセフィアナ・カーネーション・ヒヤシンス
菜の花をいただきました。群生していると黄色い絨毯の様で見事ですよね。菜の花を眺めていると、私が子供の頃にはたいていの小学校には菜の花が植えてあって、その花を利用して花の構造を学んだなぁ。菜の花を花ビラ4枚・ガク4つ・雄しべ6つ・雌しべ1つと分解して、台紙にセロテープで貼りつけた覚えがあります。さらに雄しべや雌しべの構造や受粉から種子のでき方まで・・・は小学生にはちょっと難しいか? そこまで学んだのは中学だったかな?などと昔の思い出が蘇ります。個人的には、愛でる菜の花もきれいだなと思いますが、食す菜の花も大好きです。春が旬の食べ物は、菜の花もタラの芽も蕗の薹もほろ苦さが特徴で、でもまたその苦味が美味しいのよねぇなどと思いが横道に逸れまして、もしかして、この菜の花も茹でたら食べられるのかな?見る菜の花と食べる菜の花は同じなのかな?と疑問が浮かびました。
そもそも「菜の花」とは、アブラナ科の植物が咲かせる花全般を指す名称で、1つの決まった種類の花を示す名称ではないのだそうです。アブラナ科に属するものには野菜が多く、ナバナ・チンゲン菜・カブ・大根・白菜・ブロッコリー・カリフラワー・からし菜・キャベツ・芽キャベツ・紫キャベツ・ケールなど色々あります。これらは花が咲く前に収穫されてしまうので花を見る機会は少ないですが、いずれの花も形状は似通っていて、大根こそ白ですが、他はみな菜の花によく似た黄色い花を咲かせます。言ってしまえばこれらの花はみんな「菜の花」と言え、つまるところ菜の花は“野菜(菜っ葉)の花”という意味だそうです。同じ意味合いで食用の菜の花を菜花(ナバナ)・花菜(ハナナ)などと呼ぶこともありますし、いわゆる菜の花の種子からは良質な植物油(=菜種油)が採れるので油菜(アブラナ)とか菜種(ナタネ)と呼ぶこともあります。
植物学的には、アブラナとかナタネと呼ばれるものは「在来ナタネBrassica campestris L.」と「セイヨウアブラナ(洋種ナタネ)Brassica napus L.」の2種のことだそうですが、チリメンハクサイに改良を加えて作られた観賞用の寒咲きナタネなども含めて、アブラナ、ナタネ、ナノハナなどの名が混乱して用いられているそうです。
在来ナタネは地中海沿岸から中央アジアの高原が原産で、中国では栽培作物として多様な野菜を生み、日本へもそれらが伝来したとされています。このように本来は菜っ葉、つまり葉物野菜として食され、古事記にも著されています。江戸時代以降は種子から菜種油を採取するようになり、明治時代以前は全国的に在来ナタネが栽培されていました。ですが、その後セイヨウアブラナが導入されると植物油を採取する目的にはセイヨウアブラナが主流となり、在来ナタネはほとんど栽培されなくなりました。セイヨウアブラナは、在来ナタネとキャベツの類との自然交雑から生じたもので、起源地は北ヨーロッパから中央アジア高原地域と言われています。このように在来ナタネに取って代わったセイヨウアブラナですが、第二次世界大戦後しばらくまでは全国各地で栽培され水田の裏作作物とされてきましたが、現在では安価な輸入品に押され、国内栽培は年々減り、菜種油用には青森・鹿児島で栽培されるだけとなっているそうです。
食用の菜の花としては、どちらの場合も花序や若芽を食します。セイヨウアブラナは固く筋っぽくなりやすい反面、在来ナタネよりも苦みが少なく強い甘みが特徴だそうです。観賞用の寒咲き菜種も栽培時期や方法の違いによって出荷先が異なるだけで、観賞用にも食用にもなるそうなので、杏林堂にいただいた菜の花も、もう少し早い時期ならば柔らかくて食べられたのではないかと思います。とは言え、きっと観賞用の菜の花には農薬が付いているでしょうから、食すには適さないですね。観賞用はあくまで愛でて楽しみましょう。
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