神経痛私考-1(X線検査考)

 今日もまた、「整形外科に行ったらX線を撮って『座骨神経痛』と診断されました」とおっしゃる患者さんがいらっしゃいました。「またか」という思いで、いい加減な医者が多いなというのが実感です。

 X線(レントゲン)では実は何もわかりません。X線で診て「椎間板ヘルニア」とか「脊柱管狭窄症」という病名をつける医師がいますが、実際には推測にすぎません。X線で映るのは、基本的に骨だけです。

 ある椎骨とその下の椎骨の間が狭いことを理由に椎間板ヘルニアという病名をつける医師が多くいます。ヘルニアとは”突出する”ということですから、椎骨と椎骨の間にあってクッションの役目をする椎間板が突出すれば、椎骨と椎骨の間(椎間)は狭くなります。ですから、「椎間が狭い⇒椎間板が突出した⇒椎間板ヘルニア」ということが推察できます。

 では、それが突出したのが今でしょうか? 過去にヘルニアを起こしていたのかもしれません。または、先天的に椎間が狭い(椎間板が薄い)人なのかもしれません。このヘルニア考は後述することとして、いずれにしろ椎間板はX線で映りませんから、真実はわからないのです。

 このようにX線では何もわからないので、WHO(世界保健機構)では交通事故やスポーツ障害、転倒事故で起きた腰痛はともかく、ぎっくり腰を含めた通常の腰痛(非特異的腰痛という)では、X線を撮らないように推奨しています。もちろんWHOの推奨ですから、国によって法律も違い拘束力は全くありません。ですから、日本でも無視されています。

 もう1つ、WHOがX線を撮らないよう推奨したのには理由があります。

 腰痛にX線を撮っても何もわからないことはすでに分かってますが、今まで医師は「X線でも撮らないと患者が満足しないから」という理由でX線を撮り続けています。つまり、医学的必要性ではなく、患者の満足度を重視して撮ることを正当化していました。

 しかし、WHOで腰痛患者に対してX線を撮った群と撮らない群に分けてその満足度を計ったところ、むしろ撮らない群の方が満足度が高かったという結果になりました。このことから、WHOはX線を撮らないよう推奨したわけです。もちろんX線による放射線被曝がありますから余計です。

 『神経痛』という病名も、医学界では既に30年以上前に死語になっています。40年ほど前に、神経ブロックの先駆者である慈恵医科大学名誉教授の若杉文吉先生は「神経痛はもう死語になっているが、後頭神経痛と舌咽神経痛という概念は残っているかもしれない」というようなことをお書きになってました。ですが、今ではそれらも死語です。

 神経痛とは、「痛みの原因が不明で、神経走行に沿って痛みがある」場合に使う言葉です。ですから、画像診断機器の発達などによって、その原因を突き止めることが可能になった現在では死語になってしまいました。

 ただ、一般の開業整形外科では画像診断機器に限りがあり、原因を突き止められないことが多いので、未だに『神経痛』という言葉が使われるのです。すなわちこれ「原因はわかりません」というのが本音です。

 医師の世界では、「わかりませんと言うのは患者の信頼を損ねるから絶対に言わないようにと指導されていると聞いたことがあります。ですから、患者さんに対して「〇〇神経痛です」と診断名を伝えるのです。また、保険申請においても「わかりません」は通用しません。何らかの診断名をつける必要があります。そのためにも便利な言葉ですが、医学会で『神経痛』という言葉を使ったら笑われるのが実際です。

 しかし、最新の画像診断機器を使って痛みの原因を突き止めても、実は治せない、治療法がないことが多いのが実際です。  ・・・次回につづく

コメントを残す