呼吸時の鍼刺入抵抗の変化の解析
Ⅱ.方法
1.対象
成人男性4名と成人女性3名(年齢36.1±14.5歳)を対象とした。被験者には予め本研究の趣旨、安全性を十分に説明し文書による同意を得た。また本研究は明治国際医療大学研究倫理委員会の承認を得て行った(承認番号24-64)。
2.実験機材
鍼刺入抵抗の測定には、自作の鍼刺入抵抗測定器(以下、測定器)を使用した。この測定器は、鍼柄を保持する部分があり、モーターの力でこの鍼柄保持部を一定速度で上下に動かすことによって、一定の速度で鍼の刺入および抜鍼が行える機器である。また鍼柄保持部の上にはヒズミゲージが取り付けられており、これによって鍼の刺入に際して鍼にかかる力を検出し、それを電圧として出力して、その値を刺入抵抗とした。実験には単回使用鍼(50ミリ・20号、ステンレス鍼)を使用した。また測定器の底面に円形の台座を取り付け、測定器を被験者の身体に乗せたとき、台座と被験者の身体をテープで貼り付け固定した。このように固定することで、鍼刺入時に鍼にかかる抵抗によって測定器が浮き上がるのを防ぎ、さらに身体と測定器の動きを同期させることによって、鍼刺入中に被験者の身体の動きがもたらす鍼にかかる加速度を打ち消した。図1に測定器の写真と模式図を示す。
呼吸の測定には、熱電対式温度計(PHYSITEMP model BAT-12、 Instruments Inc, U.S.A)を用い、そのプローブを鼻孔付近に貼り付け、鼻孔を通過する温かい呼気と吸気時の外気温による温度変化を呼吸曲線として記録した。なお測定は、温度の変化率ならびにその実数で行った。
表面筋電図の記録には銀-塩化銀表面電極を用い、入力箱、生体用増幅器(MEB-9102,日本光電社)を用いて増幅し、デジタルオシロスコープVC-11(日本光電社)でモニターしながらチャートレコーダに記録した。針筋電図の記録には絶縁鍼電極(180um、50mm、松葉社)を使用し、生体用前置増幅器(DAT-80-,WPI)を使用した後、同様にVC-11でモニターしながらチャートレコーダに記録した。
Fig.1 Device of insertion resistance measurement
An acupuncture needle is attached to the holder and inserted at a given speed. A strain gauge was placed at the basement of holder, which detected the insertion resistance as output voltage change.
A.Photograph of the device
B.Schematic illustration of action of the device
3.方法
(1)鍼刺入抵抗の測定
サーミスター温度計のプローブの先端を鼻孔付近にテープで貼り付けた後、被験者を腹臥位にし、験者の手で鍼を被験者の腰部(腎兪(BL23)~大腸兪(BL25))または大腿部に15mm直刺し、測定器に鍼柄を固定して、被験者の腰部に測定器自体をテープで固定した。この状態で呼吸と刺入抵抗の記録機器の作動をモニターし、被験者の呼吸が安定し、測定器の固定が確実にできていることを確認した。その後、一定の速度(0.5㎜/秒)で刺入を開始した。
呼吸の制御に関して、終始ゆっくり大きめに閉口して呼吸することを指示した通常呼吸群と、鍼を刺入している途中で息を大きく吸って止め、しばらく保持した後、通常呼吸に戻すことを指示した吸息停止群、同様に刺入している途中で息を吐き切って止め、しばらく保持した後、通常呼吸に戻すことを指示した呼息停止群を設けた。
(2)筋電図の記録
測定器を挟むようにして、台座の1~2cm横で脊柱起立筋上に一対の表面筋電図用の金属皿電極をテープで貼り、不関電極として皿電極を同側横腹に貼った。この状態から呼吸と刺入抵抗および表面筋電図の同時記録を行った。なお1名の被験者には、表面電極のかわりに絶縁鍼電極を用いて、脊柱起立筋から単一神経筋単位(NMU)の電気活動の記録を試みた。
4.解析方法
実験で得られたデータは、統計処理を行うために数値化した。スキャナーで取り込んだデータグラフをPhotoshop8(Adobe社)で画像処理し、それをフリーソフトウエアのGraphcel(T.KOBO)で数値化してエクセルに取り込み、エクセル統計Statcel2(アドインソフト、柳井久江)を用いて、ピアソンの相関係数の検定および単回帰分析を行った。
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