研究論文

呼吸時の鍼刺入抵抗の変化の解析 Ⅲ.結果

呼吸時の鍼刺入抵抗の変化の解析

Ⅲ.結果

1.鍼刺入抵抗の測定
 腰部での刺入抵抗測定は、6名の被験者を対象に52回行った。そのうち37回では呼気と吸気が切り替わるのに同期して刺入抵抗が変化する現象がみられた。図2-Aにその一例を示した。この図では、呼気の開始と同時に急激に刺入抵抗が減弱し、吐き切る頃に一番抵抗が弱い。また呼気から吸気に移行する期間は徐々に刺入抵抗が増し、吸気開始と同時に急激に抵抗が増大し、吸気から呼気に移行する時期の抵抗が最も強い。
 図2-Bでは、図2-Aの画像データをエクセルに変換した。刺入抵抗と呼吸のグラフを重ねたところ、両者が一致して変動していることは明らかである。そこで、一連の測定値(6回の呼吸)、および図2-Bで四角く囲った枠内の1回の呼吸における刺入抵抗と呼吸の相関を調べた。その相関係数はr=0.731(p=7.13E-35)、およびr=0.880(p=7.15E-11)であった。
Fig.2 Change of insertion resistance and respiration with the passage of time
A. Insertion resistance was shown as voltage. The high voltage indicated high value of insertion resistance. Respiration was monitored by temperature changes at the nostril. The temperature curve in the figure was differentiated one. The start of expiration and inspiration were indicated as arrows e and i. Increase of temperature was shown as downward in the monitored temperature.
B. Two graphs in Figure A were superimposed for demonstrating synchronized changes of both curves.

 また図3には、単回帰分析を行った結果を散布図と一次回帰直線として表した。6回の呼吸の測定結果の回帰式はy=0.74x+0.193、決定係数はR2=0.534であった。1回の呼吸の測定結果はy=1.14x-0.001、決定係数はR2=0.774であった。
Fig.3 linear regression function and scatter plot by single regression analysis
A. Results of single regression analysis using data from six respiratory cycles.
B. Result of single regression analysis using data from one respiratory cycle in the green square at fig.2-B.

 腰部への鍼刺入中に呼気で息を止めた群の刺入抵抗測定を16回行った。そのうち12回では呼吸をしているときに見られる刺入抵抗の変化が呼吸停止中に消失した。同じく、吸気で息を止めた群の刺入抵抗測定を16回行った。そのうち10回では呼吸をしているときに見られる刺入抵抗の変化が呼吸停止中に消失した。図4にそれらの一例を示した。いずれも呼吸を止める前に見られていた呼吸に同期した刺入抵抗の変化が、呼吸停止中には消失し、呼吸再開とともに再現した。
Fig.4 Changes in insertion resistance during the holding of respiration
A. Changes in insertion resistance during the holding at expiration phase.
B. Changes of insertion resistance in case of breathing suspension at inhalation. Monitored respiratory curve is based on the temperature not differentiated one.

 大腿部での刺入抵抗測定は、7名の被験者を対象に17回行った。その結果、いずれにおいても呼吸に同期した刺入抵抗の増減は見られず、刺入深度が深くなるのに比例して刺入抵抗が増していく現象が見られた。図5にその一例を示した。
Fig.5 Changes of insertion resistance in the femoral region and respiration
 これらの現象はすべての被験者において観察され、また同一被験者での再現性も確認された。

2.筋電図の記録
 腰部の鍼刺入抵抗測定中に表面筋電図の同時記録を4名の被験者を対象に20回行った。呼吸と針筋電図の同時記録は1名の被験者を対象に3回行った。いずれにおいても呼吸に同期した腰部の筋の電気活動を記録することはできなかった。図6にそれらの一例を示した。
Fig.6 Records of EMG and monitored respiration
A. Surface EMG recordings during respiratory cycles.
B. Needle EMG recordings and monitored respiratory cycles.

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。