今週のお花(スカシユリ・オンシジウム・デンファレ・トルコキキョウ・丸葉ルスカス・ヒバ)

花材:スカシユリ・オンシジウム・デンファレ・トルコキキョウ・丸葉ルスカス・ヒバ

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今週は「スカシユリ」に注目します。多くのユリが下向きに咲く中で、スカシユリは上向きに咲きます。それにお花屋さんで見かけるスカシユリには、他のユリによく見られる花ビラの鹿の子斑点もなく、たいていがピンクや黄色などのパステル調の優しい色合いなので、明るく朗らかな印象を持ちます。今回頂いたスカシユリも明るい黄色ですね。

スカシユリは学名をLilium maculatumといい、ユリ科ユリ属の球根類です。ユリは世界に約100種あり、日本にも15種が自生していて、そのうち6~8種(※諸説あり)は日本の固有種だそうです。スカシユリもその一つで、主に東日本の海岸線に自生しています。自生地の違いによって新潟県以北の日本海側は6月、紀伊半島以北の太平洋側は7月とその開花期が異なるため、日本海側をイワユリ、太平洋側をイワトユリと呼んで区別する意見もありますが、いずれの花も大きさは10㎝程度と比較的小ぶりで、色はオレンジ色に褐色の斑点が入ります。また、どちらも海岸近くの崖や岩場、砂地など人が近寄りにくい場所に自生しています。

スカシユリは他のユリに比べて草丈が低いので、たくさん草木が生えるような場所では負けてしまうでしょう。ですが逆に背が低いことは強い風が吹いても倒れにくいという強みになります。また、花びらの基部が細くなっているので、花びらと花びらの間に隙間ができ向こうが透けて見えることから「スカシユリ(透かし百合)」と名付けられたそうですが、このような花の構造も風の抵抗を少なくするために一役買っているかもしれません。このような形態上の特徴と塩分への適応の結果、一見厳しい環境のように思える海岸近くの崖や岩場は、スカシユリにとって競争相手の少ない楽園であるようです。

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とここまできて、巷に出回っているスカシユリと随分イメージが違うなぁ、花びらの間に隙間? そんなの見たことないぞ? と思いましたら、今売られているスカシユリは園芸品種で、原型からずいぶん変化しているようです。

そもそもユリは、園芸的には交配の元にした野生種の違いで8つのグループ(Division1~8)に分け、そこに原種・変種(Division9)を加えて9つに分類しています(※英国王立協会による分類法)。このうちオニユリ、マツバユリ、コオニユリ、イワトユリ、コマユリ、イトハユリ、ヒメユリなどアジア原産のユリの仲間が元になった系統をDivision1として「アジアティック・ハイブリッド(Asiatic Hybrids)」と呼んでいます。現在スカシユリとして出回っている多くは、この系統の品種です。ですが、それだけでなく、欧米原産のユリを交配した品種や両者の交雑種などの栽培品種も総称してスカシユリということがあるようです。

なので、野生種はオレンジ色で褐色の斑点があり、花弁の根元が透いているのが特徴ですが、園芸品種には赤や黄色が多く、最近は白やピンクなどのパステル調の色もあり、複数の色が入るカラフルな品種もあります。斑点もあったりなかったり、名前の由来の“透かし”はほとんどのスカシユリに見られません。花の付き方、咲き方、草丈などもどんどん改良されているようで・・・。スカシイユリとは?と聞かれても、一口にその特徴を説明できる状況ではなくなってきているようです。

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